第88回 間接部門の働き方改革

今回は、間接部門の生産性を上げるための具体的な間接改善の進め方・手法を説明します。それは間接3軸改善という手法で、業務の流れを機能面からもう一度見直し、必要度の低い仕事の削減、業務フローの見直し、費用対効果の少ない仕事の改善を行なうことにより理想的な業務の流れを実現し、間接部門の生産性を上げて行く改善手法です。具体的に間接3軸改善とは、読んで字のごとく、「業務効率改善軸」「業務フロー改善軸」「教育・意識改革軸」の3つの軸で同時並行的に改善を進める手法です。この手法は、前回説明した会社を変えるための3つのポイント、①従業員のモチベーションアップ、②構造的問題点の見える化、③教育を伴った全体最適視点の改善活動、を解決する有効な改善手法と言えます。



生産革新第20-5


■業務効率改善軸(チーム活動)
部門内のチーム単位での改善活動で、具体的な改善活動を通じて業務効率の向上を目指します。生産性指標を作成し、日常業務の中のムダを排除することにより効率的な業務遂行を実施します。

■業務フロー改善軸(プロジェクト改善)
業務フローを中心として、仕事の仕組みや流れ自体を見直して行きます。部門間に発生する問題や組織の構造的な問題点にメスを入れ、抜本的な仕組み改善を実施します。

■教育・意識改革軸
改善を行っていく上で必要な改善知識、管理技術を学んで行きます。間接業務はモチベーションによって効率も変わるので、やる気を醸成する手法の展開も行っていきます。

間接3軸改善の特徴は3点あります。1つ目は、業務効率(生産性)指標を取ることにより、改善の進捗を「見える化」して行くところにあります。2つ目は、チーム改善とプロジェクト改善はあくまでも役割分担であり、課題によっては共同で改善を進めることにより、従来手法と違い、個人の仕事の効率だけでなく、組織としての仕事の効率や仕事の与え方も改善して行きます。3つ目は、知識教育、意識改革を行うことによって、改善を進めて行くために必要な人材を育成しながら成果を上げて行きます。

特に3つ目の「教育・意識改革軸」は重要な取組です。適切な知識がないと物事の正常と異常の区別がつかない(問題形成能力不足)ことになります。また、適切な改善手法を知らなければ、試行錯誤になり短期間で成果を出せないことになります。知識教育や改善手法の教育による意識改革を行うことによって改善が適切に進んで行くとともに、成功体験を通じて従業員のモチベーションの向上による間接業務の効率化に繋がってきます。改善を進めて行くために必要な人材を、各種教育と改善の実行を通じて育成することが重要です。実際のコンサルティングの現場では、コンサルタントが必要な知識教育や従業員の意識改革を図っていきます。

取り組みの推進組織は、業務効率改善の組織別の小集団型のチームと業務フロー改善の組織横断的に課題別にチームを編成します。全体最適化チームが中心になって、コントロールタワーとして各PJをとりまとめて行きます。専任担当者は、改善活動の専任者で、各チームに対するサポートの実施をする非常に重要な役割です。各PJは単独で改善を進めて行くのではなく、連携を取りながら改善を進めて行きます。生産性向上、企業体質改善を目的とする場合は業務効率改善(チーム改善)に力を入れます。人員削減を目的とする場合は、フロー改善(PJ改善)を主体に進めます。


生産革新第20-5


間接部門の改善活動を進める場合に非常に重要なのが、自分たちの業務の効率を図る指標すなわち業務効率指標を算出するということです。つまり間接部門の生産性指標ということが出来ますが、従来はこのよう改善の結果を判定する指標が無かったために、間接部門の改善があまり進まなかったり、単発的な改善に終わってしまっていたのではないでしょうか。

業務効率とは各部門で行なっている業務の付加価値を算定し、単位時間当たりの付加価値量を求めたものです。



生産革新第20-5


価値ポイントは、現状業務に対して一定の付加価値を設定し、一定期間内に終了させた業務に割り当てていたポイントの総和が価値ポイントで、チーム単位で計上します。

総投入時間は、一定期間内(日または週、月)で価値ポイントを得るために必要となったチームメンバーの業務処理時間の総和であり、通常は勤務時間と残業時間(休出含む)の合算値となります。

業務の種類によって価値ポイントは変わるので、絶対値ではなく値のアップ率で判定します。業務効率指標を使うことによって間接部門の生産性向上活動は非常に進みやすくなってきます。

次回は、間接部門の生産性を上げるための具体的な改善内容について説明をします。



株式会社アステックコンサルティング
コンサルティング本部 コンサルタント 松山 和人
生産革新講座 連載
第105回  生産管理の重要性 ~製造メーカーにおける生産管理の位置づけ~(2024.10.9)
第104回  新製品の企画開発の進め方(3/3)(2023.3.13)
第103回  新製品の企画開発の進め方(2/3)(2023.2.20)
第102回  新製品の企画開発の進め方(1/3)(2023.1.30)
第101回  原価設計と運用(3/3)(2023.1.12)
第100回  原価設計と運用(2/3)(2022.12.19)
第99回  原価設計と運用(1/3)(2022.11.28)
第98回  経営成果につながる小集団活動(3/3)(2022.11.16)
第97回  経営成果につながる小集団活動(2/3)(2022.10.18)
第96回  経営成果につながる小集団活動(1/3)(2022.9.26)
第95回  調達を機軸とした企業変革力の強化(3/3)(2022.9.5)
第94回  調達を機軸とした企業変革力の強化(2/3)(2022.8.23)
第93回  調達を機軸とした企業変革力の強化(1/3)(2022.7.25)
第92回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(3/3)(2022.7.4)
第91回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(2/3)(2022.6.13)
第90回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(1/3)(2022.5.30)
第89回  間接部門の働き方改革(3/3)(2022.5.18)
第88回  間接部門の働き方改革(2/3)(2022.4.14)
第87回  間接部門の働き方改革(1/3)(2022.3.25)
第86回  生産性指標の設定と活用方法(3/3)(2022.2.28)
第85回  生産性指標の設定と活用方法(2/3)(2022.2.7)
第84回  生産性指標の設定と活用方法(1/3)(2022.1.19)
第83回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(3/3)(2021.2.22)
第82回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(2/3)(2021.2.8)
第81回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(1/3)(2021.1.25)
第80回  生産設計によるコストダウン(3/3)(2021.1.12)
第79回  生産設計によるコストダウン(2/3)(2020.12.21)
第78回  生産設計によるコストダウン(1/3)(2020.12.7)
第77回  生産管理システムを活かした改善(3/3)(2020.11.24)
第76回  生産管理システムを活かした改善(2/3)(2020.11.9)
第75回  生産管理システムを活かした改善(1/3)(2020.10.27)
第74回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(4/4)(2020.10.12)
第73回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(3/4)(2020.9.29)
第72回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(2/4)(2020.9.14)
第71回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(1/4)(2020.8.24)
第70回  指標管理による業務革新の「見える化」(3/3)(2020.8.3)
第69回  指標管理による業務革新の「見える化」(2/3)(2020.7.20)
第68回  指標管理による業務革新の「見える化」(1/3)(2020.7.6)
第67回  部門・組織を越えた改善の進め方(3/3)(2020.6.22)
第66回  部門・組織を越えた改善の進め方(2/3)(2020.6.8)
第65回  部門・組織を越えた改善の進め方(1/3)(2020.5.26)
第64回  全体最適型改善のススメ(3/3)(2020.5.15)
第63回  全体最適型改善のススメ(2/3)(2020.4.27)
第62回  全体最適型改善のススメ(1/3)(2020.4.6)
第61回  攻めの設備保全(3/3)(2019.8.5)
第60回  攻めの設備保全(2/3)(2019.7.22)
第59回  攻めの設備保全(1/3)(2019.7.1)
第58回  食品メーカーの生産性革命!(3/3)(2019.6.17)
第57回  食品メーカーの生産性革命!(2/3)(2019.6.3)
第56回  食品メーカーの生産性革命!(1/3)(2019.5.20)
第55回  コストの見える化(3/3)(2019.5.8)
第54回  コストの見える化(2/3)(2019.4.15)
第53回  コストの見える化(1/3)(2019.4.1)
第52回  強い管理職をつくる!(3/3)(2019.3.18)
第51回  強い管理職をつくる!(2/3)(2019.3.4)
第50回  強い管理職をつくる!(1/3)(2019.2.18)
第49回  設計開発部門改革の第一歩(5/5)(2019.2.4)
第48回  設計開発部門改革の第一歩(4/5)(2019.1.21)
第47回  設計開発部門改革の第一歩(3/5)(2019.1.7)
第46回  設計開発部門改革の第一歩(2/5)(2018.12.17)
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第15回~第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)

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