第61回 「攻めの設備保全」
具体的な取り組み内容前回はモノの流れを止めない視点をもち、保全活動を分類することを説明しました。今回は予防保全活動と事後保全活動の具体例な進め方を説明していきたいと思います。 |
1.予防保全の取り組み ~機能低下からトラブル原因を予防する~ |
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以前のコラムで、予防保全は設備の兆候をいち早く発見することがポイントと説明しました。安全衛生でよく用いられるハインリッヒの法則のように、トラブルが発生する要因には、チョコ停や機能低下、更にその下には摩耗やガタなどの微欠陥があります。安全では、重大災害を発生させないために、それらの要因である、ヒヤリハットをなくしていくという考えが定着して実施しているのに、設備保全においては、トラブル件数のみ管理しており、それらの要因については管理ができていないことが多くあります。設備トラブルを事前に察知するには、これらトラブル要因を定量的に捉えて日常的に管理を行い、異変が起きたら重点管理していく仕組みをつくっていく必要があります。 しかし、トラブル要因であるチョコ停を管理するといっても、毎日発生した件数や、時間をカウントするのはオペレーターの手がかかってしまうので、設備7大ロスの構造を理解し、日報データからチョコ停時間を算出する方法や、IoTなどを用いて設備停止時間を把握する方法などを用いて、容易にチョコ停時間の把握をしていく必要があります 。 |
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チョコ停の時間を定量的に把握することができれば、チョコ停が多く発生した際に、それらの内容を分析し、チョコ停を発生させている要因の微欠陥をなくしていけば、トラブルの未然予防に繋がります。 |
2.事後保全の取り組み ~判断時間のムダを排除する~ |
事後保全においては、各設備の余裕時間内で修理する必要があるので、修理時間を短くしていく取り組みをしていきます。修理時間といっても、単純に設備を修理している時間の他に、保全担当が到着する待ち時間や、トラブル内容を特定するまでの判断時間なども含まれます。ここでは、修理時間短縮の方法の1つとして、判断時間の削減について説明していきます。 判断時間を短くするには、個人のスキルの問題もありますが、工場として早急に問題点が把握できる、トラブルシューティングが必要となります。しかし、トラブルシューティングは作成に時間がかかり、ほとんどの工場では個人のスキルに頼っていることが多いのです。 一方で、工場では設備トラブルが発生した場合、「なぜなぜ分析」を行いトラブルの根本原因を追究し、修理をするといった取り組みを行っていることが多くあります。なぜなぜ分析は、発生したトラブルに対して、原因を追究していき最終的にトラブルの真因にたどりつくための手法ですが、多くの場合、使われるデータは最後の真因のみで、途中で検討したトラブル発生可能性のある原因のデータは使われることはありません。 しかし、それら検討したデータはトラブル発生の可能性のある原因なので、トラブルシューティングにそのまま活用することができます。そのようにして、普段行っているなぜなぜ分析のデータを蓄積していくことで、効率的にトラブルシューティングを作成し、判断時間を短くすることで、設備の余裕時間内での保全活動が可能になってきます。 |
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3.まとめ |
以上で述べたとおり、予防保全活動と事後保全活動を効率的に行い、設備が安定稼動することで、モノづくり現場に安心感を与え、計画どおりのモノづくりに専念させることで、生産性向上への課題がより明確に見えてきます。さらに、設備が安定稼動することは保全部門にも余裕が生まれ、より高精度な設備や、壊れにくい設備の開発や改善といった、新たな付加価値創造業務への展開を図ることができます。 |
株式会社アステックコンサルティング コンサルティング本部 マネジメントコンサルタント 川津 武史 |