第28回 「一気通貫生産のバリエーション化」
2.一気通貫生産方式とは |
---|
1. 一気通貫生産方式の特徴 一気通貫生産方式とはモノの流れと情報の流れを高度にコントロールすることにより、圧倒的なリードタイム短縮を実現し、大幅な在庫圧縮、生産性向上を実現する生産方式である。いわゆる全体最適手法であり、工場全体としての「モノづくりの仕組み」を再構築していく考え方である(図1)。初工程着手から完成まで最短で流れる詳細な生産計画を作り、計画に沿って停滞することなくモノを流していく。基本概念として「1円でも安く、1秒でも早く」を目指し、それを実現するための基本思想が「停滞排除」と「情報制御」である。「停滞排除」の切り口では工程間の停滞時間に注目する。一般的に多くの製造業では実際のリードタイムの95%以上は停滞時間であり、一気通貫生産では徹底的に停滞時間比率を下げていく。そのためには停滞発生ポイント削減、層流化、通過時間調整、同期化などを行っていく。また、「情報制御」とは受注から出荷までの情報の流れを整流化すると共に、製造現場に対して投入工程から完成工程までを1本でつなげた緻密な生産計画を提示し、計画通りに製造を行わせることである。そのためには当然情報の精度にもメスを入れる。一気通貫生産方式の詳細は「一気通貫生産方式」(岩室宏著、日刊工業新聞社刊)もしくは「工場管理 2012年3月号」の解説記事をご覧頂きたい。 |
|
2. 一気通貫生産方式実現のポイント 一気通貫生産方式は信頼できる生産計画の立案と、計画どおりにモノを作れる現場の構築の両輪がうまく機能して初めて実現できる。すなわち「生産安定性の実現」が不可欠である。生産安定性とは「計画安定性」、「設備安定性」、「品質安定性」、「労働安定性」、「調達安定性」の5つのファクターから成り立っている(表1)。 |
|
それぞれの安定性で求められる姿とそれを実現するポイントは「計画安定性」では現場の実力に即した正しい計画を作る力、時間、分単位の精度が求められ、信頼できる生産計画の立案と進捗管理がポイントとなる。「設備安定性」では設備を安定的に稼働させ、故障・停止・トラブルを発生させないために、可動率の向上・故障後の修復時間削減に注力すべきである。「品質安定性」では不良を作らない、流出させない、異常を早期に発見し是正する力をつけるために、慢性不良に対する根本対策・直行率管理が必要となる。「労働安定性」では生産を行うのに必要な人員数、能力、技能を確保するにあたり、労働生産性向上・教育(意識・知識)・多能工化が重要となる。「調達安定性」では生産に必要な良質且つ格安な資材をタイムリーに供給する能力を向上させるため、調達LTの短縮・定日納入の遵守 がポイントとなる。 |
|
日刊工業新聞社刊「工場管理」2016 VOL.62 No.3 掲載記事に加筆訂正 株式会社アステックコンサルティング |