第22回 「時代環境と変えるべきもの」
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1. 自社の置かれた環境を認識する 日本企業の多くは成熟期に該当する環境に置かれていると考えられるが、残念ながら生産の仕組みや生産管理の方法は成長期の仕組みから成熟期の仕組みへ転換できていない企業が多いように感じられる。多くの場合において成長期における工場の価値観は生産性であり、決められた時間内にいかに多くの製品を作るのかが重要視されてきた。ただ、先に述べたように成熟期においては多品種化が起こり、1製品あたりの生産量も少なくなるため目先の生産性を追及すれば必然的にまとめ生産や将来ロットの先食いが発生し、結果として仕掛り在庫の増大に悩まされることになる。このように、成長期の価値観で成熟期の製品を管理すると管理上の混乱を引き起こし、逆に生産性は低下してしまうのである。さらに製品ライフサイクルの時期によって求められる価値観は違うため、生産方式や管理方式、改善手法などもライフサイクルの時期によって変えて行く必要がある。 技術開発型の企業や新商品開発を積極的に行なっている企業では、工場内に導入期の製品、成長期や成熟期、衰退期の製品を同時に抱えている場合があるが、実はこのような工場が最も管理が難しい。おのおのの時期によって求められる管理形態が違うが、工場としては同時に複数の管理形態を並存させることは困難なため、非常に混乱してしまうのである。大手企業では、よく事業部制や子会社制を取っている場合があるが、これは基本的に製造している商品群ごとのライフサイクルに合わせて分けることにより、生産上や生産管理上の混乱を避け効率的な管理を行なって行くためのものである。 |
2. 多品種少量生産における管理の仕組み 成熟期の製品の生産において品種数の増大は避けられないものである。こうした状況は管理ポイントの増大をもたらし、必ずコストアップにつながっていく。そのため“スクラップ&ビルド”が基本的な製品戦略になるが、残念ながらこれを確実に行なっている企業は極めて少ない。ほとんどの企業は“ビルド&ビルド”になっており、製品数は増える一方で、より管理を困難にしている。このように多品種化がかなり進んだ状態では個々の製品や個々の職場の生産性など、個別の管理を中心にしていては管理に要する労力が増大し、生産の全体像も見えなくなってしまう。そのため、多品種少量生産環境下では個々の製品を追うのではなく、生産全体の流れや受注から出荷までの情報の流れ全体を対象とした管理を行なって行く必要がある。いわば、これが全体最適型管理であり、成長期のような組織単位の生産性向上を目指した部分最適型管理とは抜本的に違う管理方式なのである。 |
日刊工業新聞社刊「工場管理」2016 VOL.62 No.3 掲載記事に加筆訂正 株式会社アステックコンサルティング 代表取締役社長 岩室 宏 |