第39回 「食品工場の生産性向上のための人員管理術」
食品業界が直面していることと特徴 |
1.食品業界の労働事情と雇用事情 |
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食品業界と一言で言っても、食品産業は多様な業種の集まりで大型プラント型の企業から完全手作業の企業まで非常に多くのバリエーションがある。一般的に分類する場合は「製造品目による分類」に加えて「販路による分類」「生産設備形態による分類」があり、タイプ別に抱えている課題は違う。
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2.食品業界の特徴 |
少し前述したが、ここで食品工場の特徴をまとめる。
■生産形態としての特徴
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3.食品業界が儲からない理由と管理の強化ポイント |
上述した特徴から、なぜ食品工場が儲からないかをまとめると、下記になる。
改善のやり方が従来の延長線上から離れられず(作業改善中心)、大きな視点での改善が少ない。また改善教育や改善を行っていくための仕組みが脆弱な工場が多く、難易度の高い改善に着手出来ない。
食品企業は各々のタイプによって抱えている課題は違うが、多くの食品メーカーに共通する課題は「生産管理力の弱さ」「労務管理の弱さ(人員定着率の低さ)」である。多くの場合これらが原因となって生産性低下、ロスコスト増大、在庫や廃棄品の増加が発生していると言える。(図1)
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生産管理力の弱さとは、どういうことなのか。生産管理の業務範囲は会社によって様々であろうが、生産管理(Production Control)の機能は、受注情報入手から出荷までのプロセスの中で、最も効率の良い(儲かる)生産を実行させる為のコントロールタワー(司令塔)でなければならない。しかし多くの食品工場の生産管理は、受注変更に対する実務処理に追われ、確定計画が出せず、製造現場へのお願いになっている。また、受注予測機能も低い為、生産量に見合った投入人員や投入工数をコントロールするという機能が皆無であるところが多い。生産計画で生産性をコントロールするという管理力が弱い。 次に労務管理力の弱さとは、どういうことか。私も仕事柄、多くの食品企業を見てきたが、社員採用に関して実際に現場が欲しいスキルを持った人材と総務が採用する人材がマッチしていない企業が多く見受けられる。当然のことながら、現場の不足機能は充填されず生産性は上がらない。また入社した社員も自分が学んできたことが生かせない職場であり、また体系的な教育の仕組みが無いため、自分のキャリアアップに不安を感じて転職するというお互いに不幸な結末に至る採用を繰り返している。また、パートタイマーの労務管理に関しても、入社してからの教育や面倒を見る仕組みがなく(あっても実行されていない)、3ヶ月以内の定着率が非常に低い。また、ベテランのパートタイマーに関しても、キャリアやスキルに応じた賃金アップの仕組みが無いため、時給の高い会社へ転職されてしまい、入社3年以上のパートタイマーの定着率も下降している現状にある。
これらのことを踏まえ、儲かる食品工場へと改革していく為には、この2つの管理の仕組みを強化していくことがまずやるべきことである。
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図2のように、5つの要素(設備の安定性、品質の安定性、労働の安定性、調達の安定性、計画の安定性)を安定させれば生産を安定させることができるが、作業者がコロコロ変わっては、設備や品質の教育をした矢先にまた1から教えねばならず、一向に設備や品質は安定しない。また、生産計画が安定しなければ急な発注変更を繰り返すことになり、過剰在庫や欠品が頻発することになる。 まずは、生産管理と労務管理を強化し、生産の安定性を向上させると共に、生産計画で生産性をコントロールできる機能の強化と従業員定着率を向上させ継続的に発展できる経営基盤の安定を図るとこが最優先課題といえよう。
次回は、生産管理力の強化の具体策について説明します。
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株式会社アステックコンサルティング |