製造業において生産活動は最も基本的な機能であり、コストを決定づける重要な要素です。当然ながら生産・ものづくりの技術の違いによって製造コストも大きく変わることになります。そのためモノづくりとしての固有技術に加えて、下記のようなな管理技術も非常に重要なファクターになってきます。 下記はアステックコンサルティングによく寄せられる課題であり、コンサルティングテーマとしてもよく上げられる課題です。 単独テーマとして取り組みこともありますし、他の項目も併せて「機能強化」として取り組む場合もあります。 改善のための基本的な考え方を記載していますので、参考にしてください。
生産性を上げたい
生産性向上とはより少ない人員・時間で、より多くの製品が作れるようにする事であり、製造業としては普遍の課題の1つと言うことが出来ます。実際に生産性を向上させるために種々の改善を行っていく事になりますが、その取り組み方によって大きな差が出ますから、正しい手順で取り組みが必要です。
生産性向上のための4つのポイント
POINT 01 |
各種作業改善を実施し、作業上のムダを排除する 一般的な改善活動で取り組む作業改善や設備改善、品質不良対策は比較的気軽に取り組める生産性向上活動の一例です。大切なのは作業の中で発生している小さなムダを見つける視点を持つことで、日々改善を繰り返して行く事で生産性向上を実現します。 |
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POINT 02 |
工程間のつながりを見直し、停滞無くモノが流れるようにする 最も効率的に生産を行うためには各工程の通過スピードを合わせる事と、工程間に仕掛かり在庫が溜まらないように管理して行く事です。そのためには生産計画段階で各工程を繋いだ計画を立案する事と、その計画を確実に守っていく製造部門を作って行く事です。 |
POINT 03 |
生産安定性を上げ、設備・品質上のトラブルを減らす 生産性向上を阻害する要因として大きいものは設備不具合と不良の発生です。そのため設備管理やメンテナンスを徹底し、設備が止まらない状況を作ることが必要です。また品質上のトラブル(不良や再検査の発生など)削減に向けた取り組みも必要です。 |
POINT 04 |
適切な製造管理で負荷の平準化を行いロスを発生させない 生産性を上げて行くためには日々の負荷変動を出来るだけ削減し、平準化生産を行っていく事が必要です。また1日の中での変動も抑え込み、人の作業負荷が時間単位で変わらないようにして行く事も必要です。生産性も即時把握出来るようにすべきです。 |
在庫を減らしたい
現在日本の製造業の大半は多品種少量生産になっています。但し生産方法や管理方法自体は従来のままであり、多量の在庫を保有せざるを得なくなっています。そのため生産のやり方(生産管理方法)自体を変えて行かないと本質的な在庫削減を行う事は出来ない点に注意する必要があります。
在庫削減の4つのポイント
POINT 01 |
工程間の停滞を排除し、清流化生産を実現する 仕掛在庫が溜まるのは、各工程が自分たちの都合に合わせて生産計画を調整するためであり、工程間の連動性が途切れているためです。そのため各工程の連動性を高め、工程間に発生する停滞時間を抜本的に排除していく必要があります。 |
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POINT 02 |
小ロット生産を実施し、各製品の製造回数を増加させる 製品在庫が溜まってしまうのは生産性を気にするあまり大ロット生産になってしまうためです。そのため小ロット生産化を進め、対象商品の生産回数を増やすことが大切です(月1回生産だったものを月2回生産にすると、在庫量は半分で済む)。 |
POINT 03 |
リードタイムを短縮し、見込み生産から受注生産への転換 在庫量とリードタイムには密接な関係があり、リードタイムが短くなるほど在庫量は減少して行きます。更に顧客要求納期よりも製造リードタイムが短くなれば見込み生産(在庫大)から受注生産化が可能になるため、在庫量は大幅に減少します。 |
POINT 04 |
在庫発生ポイントの明確化と在庫発生条件の改善 生産の仕組み上必ず在庫が発生する場所を在庫発生ポイント(熱処理や外注、設備などロットの大きさが変わる工程)と言います。まずこのポイントを明確にし、生産計画やロットの概念の変更などのテクニックを使い工程間在庫が溜まらないようにして行きます。 |
リードタイムを短くしたい
製造リードタイムは生産状況を現す指標でもあり、リードタイム短縮を実現するためには生産工程上のトラブルを大きく減らすことが必要になります。またリードタイムを短縮すると顧客納期遵守率が高まると共に在庫が減少することになるので、経営面においてもメリットの多い取り組みです。
リードタイム短縮の4つのポイント
POINT 01 |
ネック工程能力を中心とした“流れる”生産体制の構築 工程間の生産能力の差を是正し、各工程間で仕掛りが溜まらないように生産工程を改善していく必要があり、これを清流化と呼びます。工場の生産能力はネック工程能力に制限されるので、ネック工程を中心とした管理を行っていきます。 |
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POINT 02 |
基準日程を前提にした部門連係型の生産計画の立案 リードタイム短縮で最も大切なのは、各工程を繋いだ生産計画を作る事です。基準日程生産方式では、生産計画上で前後工程を連結させて行くので、停滞無くモノが流れる状況を作り出して行く事が可能です。常の止まらない流れを目指して行きます。 |
POINT 03 |
生産の流れをリアルタイムで確認する進捗管理の実施 生産活動をマネジメントして行く上で大切なのはリアルタイムで問題点を把握し、是正策を講じて行く事です。生産が終了した段階で生産の遅れhが発覚しても対策は打てないので、出来るだけリアルタイムで問題を把握することが大切です。 |
POINT 04 |
生産計画通りに作ることの出来る現場体質の構築 緻密な生産計画を作っても、製造現場がそれを実現できなければ意味がありません。そのため、設備・人・生産方法を適切に管理し、生産計画通りにモノを作ることが出来る現場体質の構築も非常に重要な改善ポイントになります。 |
設備稼働率を上げたい
設備稼働率の向上は製造コスト低減につながると共に生産量の増大及び売上の増大にもつながる取り組みであり、工場としては継続的に実施すべき活動ですが、取組内容がチョコ停対策など一部に留まっている企業も多く見られます。出来るだけ多面的な視点で稼働率向上に取り組む事が必要です。
設備稼働率向上の4つのポイント
POINT 01 |
加工計画をしっかりと立て、すき間時間を作らない 設備の稼働計画は作業者任せになる場合が多く、稼働率が50~70%程度になっている企業も多く存在します。そのため加工標準時間を定めた上でしっかりとした加工計画を作る必要があります(段取り時間や刃具交換時間も計画に織り込んで行く)。 |
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POINT 02 |
切削条件や加工条件を工夫し、加工速度を上げる 刃具の選定や送り速度など加工条件を改善していく生産技術的な取組みも必要です。加工条件は最初に決めたままで変わっていない企業も結構多い為、思い切って変えて行く事も必要です。また設備に関しては技術の進歩も早いので、新しい情報を取る事も必要です。 |
POINT 03 |
設備メンテナンスを徹底し、故障やチョコ停を防ぐ 設備稼働率を低下させる故障停止やチョコ停などを防いで行く事が必要で、日常点検、月次点検などを行う事によって予防保全体制を構築していきます。また補用品管理をしっかりと行い、故障停止時間を出来るだけ短くする取り組みも必要です。 |
POINT 04 |
稼働率向上を目指して、注文が無いものまで作らない 設備稼働率は生産性を上げる重要な手段ですが、設備稼働率を上げる事だけに注力し、使用予定のない部品まで作ってしまう事は避ける必要があります。また「まとめ生産」傾向が強いと過剰な在庫が発生することになるので、生産計画の範囲内で生産すべきです。 |
不良を削減したい
不良の発生は直接的なコスト面の損失だけでなく、顧客からの信頼を含めた副次的な損失がより大きな問題になってきます。そのため不良対策は最優先で取り組む課題ですが、ただ対策がマンネリ化し同種の不良を発生させ続けている場合も多いので、抜本的に発想を転換させた取り組みも必要です。
不良削減の4つのポイント
POINT 01 |
表面的な原因追及に止まらず、真因まで追求する 同様な不良やクレームが継続的に発生している場合は本質的な原因追及が出来ていない場合がほとんどです。いわゆる真因に到達できていない可能性が高いので、原因追及の方法や手順を見直していく必要があります。より深いレベルで思考することが大切です。 |
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POINT 02 |
クレーム内容と検査項目が合致しているか検証する 不良品が流出したり、クレーム発生を防止できない場合には、現在の検査項目が不良の発生や流出を防止できる内容になっているかどうか検証する必要があります。また同時に検査方法が不良を正しく検出できる制度や項目になっているかも剣する必要があります。 |
POINT 03 |
不良の発生ポイントと発見ポイントを近づける 不良の原因追及がしっかりと出来ない理由の一つとして、不良発生ポイントと不良発見ポイントに時間差が発生していることが上げられます。発生ポイントと発見ポイントが近ければ、不良発生時の状況を確認しやすくなるため、原因追及が容易になります。 |
POINT 04 |
慢性的に発生している不良は視点を変えた取り組みを行う 過去から継続的に発生している不良に対しては原因追及や対策の傾向がマンネリ化し、実質的な改善策になっていない場合が良くあります。そういう場合は抜本的に視点を変えることが必要で、未経験者を含めて新たなメンバーや新たな手法で取り組む事が必要です。 |
多能化を進めたい
生産上で急な欠勤が発生したり、設備故障や緊急生産などが発生する事は必ずありますが、そういう場合に多能化が進んでいると必要なラインや作業の停止を防ぐことが出来るので、生産管理上非常に有利になります。生産のフレキシビリティーを上げるためにも多能化は推進すべきです。
多能化推進の4つのポイント
POINT 01 |
作業マニュアルの作成(最近は動画マニュアルも多い) 多能化を進めるためには作業マニュアルは必須のもであり、作業上のやり方だけでなく、缶やコツも含めた内容にしていくべきです。最近は動画マニュアルを作成する企業も増えてきましたが、映像だけでなく文字情報も含めて表示させるべきです。 |
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POINT 02 |
時間軸をベースに置いた判定基準の明確化 多能化のレベル認定をベテランや役職者の判断に任せるのではなく、ある程度明確な判定基準を作成しておくことが必要です。特に大切なのは時間基準を作っておくことで、繰返し型の作業の場合は〇秒以内なら合格などの基準を公開しておく事です。 |
POINT 03 |
新たに得た技能は、実生産で定期的に担当させる 新たに技能を学んだり、新しい仕事が出来るようになったとしても、使わなければやがて技能は低下して行きます。そのため定期的に新しい業務を担当できるようにして行く事も必要です。つまり、多能化だけを目的にしていろいろ学ばせても意味は無いです。 |
POINT 04 |
社員は成績評価、パートは時給に反映させる 多能化はその必要性に応じて行っていくべきですが(多能化自体を目的にしない)、しっかりと対応できるようになった場合にはそれに対する対価を講じる必要があります(モチベーションの元になる)。パートは時給に反映させるのが基本です。 |