第57回 「食品メーカーの生産性革命!」
今回は、食品メーカーの生産性を上げるための着眼点と改善の進め方について説明をします。 |
1.食品メーカー革新の着眼点 |
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食品メーカーの生産性を大幅に向上させるためには、生産管理系の改善、製造管理系の改善、現場管理系の改善、製品管理系の改善という大きく4つの着眼点があります。 ①生産管理系改善とは、物の流れと情報の流れを管理する、生産計画を中心とした管理系の改善です。 ②製造管理系改善とは、工場全体を俯瞰的に見て行う管理(主として人、物、設備、技術)系の改善です。 ③現場管理系の改善とは、作業のやり方を改め、生産性の向上や効率アップを狙う改善です。 ④製品管理系の改善とは、製品の出来映えについて一定の水準を決めて管理する、基準の明確化が必要な管理系の改善です。 その他の個別改善の着眼項目としては、歩留、設備保全、人員枠管理、クレームについての改善があります。 特に食品メーカーにおける改善は、製造技術を磨き上げる必要があります。製造技術とは現在保有している設備、人員、部品・材料、情報、時間などの経営資源を最大限に使いこなし、与えられた範囲内でより安く、より早く物を作るための技術です。 いわば最適な製造を行うための管理技術です 。 |
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コスト競争の厳しい業界(食品、自動車、家電など)では製造技術に力を入れる企業が多いものです。特に品質や納期で大きな差がつけられない場合は必然的にコスト競争になるため、製造技術が重要視されるようになります。この製造技術は、改善活動を行うことによって磨かれていくものです。また、見えないコストを下げるという視点も重要です。 |
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コストには「見えるコスト」と「見えないコスト」があり、一般的に食品メーカーは「見えないコスト」が大きい傾向があります。「見えないコスト」は気がつかないうちに増加し収益を圧迫しますが、その原因は各種管理面の不備です。工場として大きくコストダウンを図っていく場合は直接コストだけでなく「見えないコスト」低減に向けた仕組みの改善が不可欠です。 |
2.改善活動の進め方 3軸改善とは |
3軸改善(製造現場改善軸、生産管理改善軸、教育・意識改善軸)とは工場改善を行っていく上で必要な3つの視点のことであり、生産性向上やコスト低減などで大きな成果を上げていくためには必須の改善手法です。従来、食品メーカーではIE的な作業改善もしくはQC活動的な改善活動が中心で、十分な成果が出ない場合が多かったのです。3軸改善はこれらの問題点を解決した、食品、医薬品、化粧品メーカーなどに最適な改善手法です。 |
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①製造現場改善軸は、いわゆる現場改善であって、モノの流れを中心に作業方法や設備改善、品質改善、段取り改善、多能化など生産遂行部分の改善軸です。よく取り組まれていますが単独では小さな効果に止まります。 製造現場改善軸では、生産計画通りに生産ができる製造現場を作ると共に、生産性向上や在庫削減、生産上のトラブル排除など具体的な改善活動を行っていきます。どんなに立派な計画を作っても、品質や設備のトラブルでラインが止まってしまったら何にもならないため、緻密な生産指示に対応できるような生産体質作りが最終的な目的です。この部分の成功が3軸改善全体の成功に大きな影響を与えるため、非常に重要な取組みです 。 ②生産管理改善軸は、いわゆる仕組み改善であって、情報の流れを中心に生産方式の転換、日程計画の改善、生産計画体系の構築、生産指示方法等の改善軸です。計画の立て方次第で生産性は大きく変わります。 生産管理改善軸では、変更の発生しない生産計画、いわゆる確定計画作りが目的であって、変更のない安定した生産を行うことで、生産性の向上、トラブルの削減(製造コスト低減)を図っていきます。計画精度自体も「日当たり総量計画」から「分単位の生産計画」までステップアップさせ、生産計画起因ロス時間の大幅削減を実現しコスト低減につなげていきます。スケジューラー等のシステムも活用し、誰でも確定型計画が作れるようなシステム(仕組み)を構築していきます。また、生産計画の基本的な体系(長期計画、月次計画、週次計画、日程計画など)を見直し、再構築していきます。工場全体の生産性やコストを考えた場合、長期計画や月次計画による生産体制作りや負荷変動対策、設備投資や人員数調整検討は非常に重要であり、確定計画による安定生産と共に工場のコスト水準を下げていくための重要な施策です。また、営業情報精度向上、調達タイミングなど大きな視点での生産計画改善を行っていきます。 ③教育・意識改善軸は、改善を行っていく上で最も大切な改善意識の醸成を行っていく改善軸です。知識教育に加えてモチベーションアップや役割分担を行っていきます。具体的な行動を起こさせる非常に重要な改善軸です。 教育・意識改善軸は、改善活動を行うに当たって不可欠のものであり、正しい改善手法や判断基準を学ぶことにより従来は見えなかったような問題点も見えるようになってきますし、問題の解決も早く、的確に行っていくことができるようになります。また、確実な成果を上げていくためには従業員のモチベーションを上げるための手法やリーダー育成手法の教育も重要です。日頃のコンサルティングの現場では、コンサルタントが適切な教育プランを立案して、知識教育と意識改革を図っていきます。 |
次回は、具体的な改善の取組みについて説明します。 |
株式会社アステックコンサルティング コンサルティング本部 コンサルタント 松山 和人 |