第103回 新製品の企画開発の進め方

開発品の基本コンセプト作成とアイデア発想強化



1.新製品開発の切り口と手法

第1回で、お示ししましたが新製品開発においては「顧客」「商品」「技術」の3要素に加えて、開発の切り口と開発方法も重要になってくる。切り口は開発のトリガー(引き金)であり、開発方法は時間と投資額の関係で決めていく。アイデアを形にするのにはエネルギーがかかる



生産革新第20-5

2.自社の技術資源を把握する

自社の会社の状況を把握する中で、自社がどんな技術資源を持っているかを明確にすることが重要になる。そのためには自社がこれまでに販売した商品をリストアップし、それぞれの製品にどのような技術が使われているのかを整理する。自社のこれまでに販売開発したものを整理した後は、それぞれの商品にどんな技術が使われているのかを整理する。網羅的にダブりなく抽出するためにそれぞれの商品を構成している要素を部位ごとに切り分け、それぞれの部位に対して技術がどのような目的でつかわれているのかをまとめ技術を明確にする。次に自社の保有するそれぞれの技術について、競合他社に対して優位性があるのかを確認し、技術資産の分析結果を活用し、新製品開発の方向性を明確にする。

3.技術ロードマップの作成ステップ

ロードマップの作成は大きく、開発すべき商品の明確化、必要な技術体系の抽出、表現方法の決定、技術開発の時間軸の明確化の4つのステップで作成する。


<ステップ1>環境分析から開発すべき商品を決める

<ステップ2>開発すべき商品の実現のために必要な技術を洗い出す

<ステップ3>商品開発までの道筋をどう表現するか決める

<ステップ4>必要な技術要素をどのような時間軸で開発するか決める

ステップ4の作成事例を下記に示す


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4.新製品候補の抽出方法

商品コンセプトが固まったら、アイデア発想法によりさらに具体的な新商品候補を抽出していく。まずロジカルに考えてみて、思考がいきづまったら発想の視点を変えてみることも必要である。最終的に抽出した候補の中から開発を進めていくことになるので新製品企画書としてまとめることを想定する。

5.アイデア発想強化

商品のSCM(サプライチェーンマネジメント)を川になぞらえて川上、川中、川下と表現する。川上・川下発想とは、上流から下流に流れる川の中で、自社の立ち位置から上流、下流を見通して事業の多角化の方向性を見出す発想方法である。川下を最終製品のみでなく、サービスも視野に入れて発想を膨らませることも多い。下記に業界毎の分類を示す。

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6.アンゾフのマトリクス

アンゾフのマトリクスとは、アメリカの経済学者イゴール・アンゾフが提唱した企業の成長機会の模索のツールである。企業の向かうべき成長ベクトルを製品軸と市場軸の2軸で表わし、それぞれ既存と新規に分類してどういう方向で事業を展開していくか考える。アンゾフの成長ベクトルでは4つのセルがあるが、セルごとに最適な戦略は異なる。商品開発を行うためには、自社の成長戦略が4つのセルのどの戦略か理解し、その戦略に合った商品を開発する必要がある。

① 市場浸透戦略
既存の製品群で、現在の市場を深堀していく戦略である。
既存品の購買数、購入金額、リピート率を高めるまずはこの戦略による成長を考える。

② 市場開拓戦略
既存の製品群を新しい市場に投入していく戦略である。
海外進出、顧客ターゲットの変更を行う。経営資源を慎重に勘案する必要がある。

③ 新製品開発戦略
現在の市場に新商品を導入していく戦略である。
単なる新商品ではなく、既存商品とは全く異なるカテゴリーの商品を開発していく。
より多くの経営資源を必要とする。

④ 多角化戦略
新たな市場に新商品を導入していく戦略である。
単なる新商品ではなく、既存商品とは全く異なるカテゴリーの商品を開発していく。
非常に多くの経営資源を必要とする。

7.アイデア発想強化(オズボーンのチェックリスト)

オズボーンのチェックリストは、ブレーンストーミングを考案したアメリカのアレックス・F・オズボーンによって考案されたアイデア発想法の一つである。あらかじめ設けた9つの項目に対して対象のキーワードを当てはめてみて、そこから何か答えが得られないかということを試しながら気づきを得るのが主な利用方法である。

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以上で、「開発品の基本コンセプト作成とアイデア発想強化」につきまし説明をさせていただきました。次章はフィルタリング・業務機能分析・投資回収検討につきまして、もっと話を掘り下げて進めていきます



株式会社アステックコンサルティング
生産革新講座 連載
第105回  生産管理の重要性 ~製造メーカーにおける生産管理の位置づけ~(2024.10.9)
第104回  新製品の企画開発の進め方(3/3)(2023.3.13)
第103回  新製品の企画開発の進め方(2/3)(2023.2.20)
第102回  新製品の企画開発の進め方(1/3)(2023.1.30)
第101回  原価設計と運用(3/3)(2023.1.12)
第100回  原価設計と運用(2/3)(2022.12.19)
第99回  原価設計と運用(1/3)(2022.11.28)
第98回  経営成果につながる小集団活動(3/3)(2022.11.16)
第97回  経営成果につながる小集団活動(2/3)(2022.10.18)
第96回  経営成果につながる小集団活動(1/3)(2022.9.26)
第95回  調達を機軸とした企業変革力の強化(3/3)(2022.9.5)
第94回  調達を機軸とした企業変革力の強化(2/3)(2022.8.23)
第93回  調達を機軸とした企業変革力の強化(1/3)(2022.7.25)
第92回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(3/3)(2022.7.4)
第91回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(2/3)(2022.6.13)
第90回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(1/3)(2022.5.30)
第89回  間接部門の働き方改革(3/3)(2022.5.18)
第88回  間接部門の働き方改革(2/3)(2022.4.14)
第87回  間接部門の働き方改革(1/3)(2022.3.25)
第86回  生産性指標の設定と活用方法(3/3)(2022.2.28)
第85回  生産性指標の設定と活用方法(2/3)(2022.2.7)
第84回  生産性指標の設定と活用方法(1/3)(2022.1.19)
第83回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(3/3)(2021.2.22)
第82回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(2/3)(2021.2.8)
第81回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(1/3)(2021.1.25)
第80回  生産設計によるコストダウン(3/3)(2021.1.12)
第79回  生産設計によるコストダウン(2/3)(2020.12.21)
第78回  生産設計によるコストダウン(1/3)(2020.12.7)
第77回  生産管理システムを活かした改善(3/3)(2020.11.24)
第76回  生産管理システムを活かした改善(2/3)(2020.11.9)
第75回  生産管理システムを活かした改善(1/3)(2020.10.27)
第74回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(4/4)(2020.10.12)
第73回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(3/4)(2020.9.29)
第72回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(2/4)(2020.9.14)
第71回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(1/4)(2020.8.24)
第70回  指標管理による業務革新の「見える化」(3/3)(2020.8.3)
第69回  指標管理による業務革新の「見える化」(2/3)(2020.7.20)
第68回  指標管理による業務革新の「見える化」(1/3)(2020.7.6)
第67回  部門・組織を越えた改善の進め方(3/3)(2020.6.22)
第66回  部門・組織を越えた改善の進め方(2/3)(2020.6.8)
第65回  部門・組織を越えた改善の進め方(1/3)(2020.5.26)
第64回  全体最適型改善のススメ(3/3)(2020.5.15)
第63回  全体最適型改善のススメ(2/3)(2020.4.27)
第62回  全体最適型改善のススメ(1/3)(2020.4.6)
第61回  攻めの設備保全(3/3)(2019.8.5)
第60回  攻めの設備保全(2/3)(2019.7.22)
第59回  攻めの設備保全(1/3)(2019.7.1)
第58回  食品メーカーの生産性革命!(3/3)(2019.6.17)
第57回  食品メーカーの生産性革命!(2/3)(2019.6.3)
第56回  食品メーカーの生産性革命!(1/3)(2019.5.20)
第55回  コストの見える化(3/3)(2019.5.8)
第54回  コストの見える化(2/3)(2019.4.15)
第53回  コストの見える化(1/3)(2019.4.1)
第52回  強い管理職をつくる!(3/3)(2019.3.18)
第51回  強い管理職をつくる!(2/3)(2019.3.4)
第50回  強い管理職をつくる!(1/3)(2019.2.18)
第49回  設計開発部門改革の第一歩(5/5)(2019.2.4)
第48回  設計開発部門改革の第一歩(4/5)(2019.1.21)
第47回  設計開発部門改革の第一歩(3/5)(2019.1.7)
第46回  設計開発部門改革の第一歩(2/5)(2018.12.17)
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第15回~第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)

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