第33回 「モノを揃えてなんぼの調達・外注管理」
生産現場の改善指導をしていると、必ずと言っていいほどぶち当たるのが、モノづくりの現場にモノが届かない、という問題です。製造会社にとって製品を作らないことには商売にならないわけですから、最優先されるべきであることは、論を俟たないにも拘らず、原料・部品が現場に届かないからモノづくりできないことが日常茶飯事なのはどういうことでしょう。 今回は、モノづくりの現場における調達、モノ揃えという点について触れたいと思います。
皆さんの工場では以下のような会話がなされていませんか?
(4月初旬のある日)
何故このような会話が繰り返されるのでしょう。何かおかしな気がしませんか? 三回シリーズの第一回目、今回は、調達と外注活動における現状と課題、そして調達・外注の定義について掘り下げてみましょう。
|
1.企業経営に大きく影響する調達機能 |
---|
製造業を取り巻く環境を考えると、最終顧客の要求が多様化し、多品種少量生産への流れが強まってきています。また、製品ライフサイクルの短寿命化に伴い、余分の材料、貯蔵品を持つことは廃棄コストの増大に繋がるリスクを抱えることになります。さらに、顧客からは短納期対応への要求が強まり、製造現場では調達準備リードタイム(L/T)、調達L/Tそして製造L/Tの短縮が求められています。コスト低減要求に起因する海外調達の増加は、さらに調達L/Tを長期化させる要因となっています。
|
|
工場はモノづくりの場であり、つくるモノと使うモノがあって初めて稼働する仕組みになっています。調達機能は使うモノをタイムリーに揃えることであり、モノづくりに必須のサポートをする役割です。では、サポートすべきお客様は誰か、直接かつ最大のお客様は、製造現場ではないでしょうか?こう考えると、現在調達部門がなさねばならないことの本質が見えてくると思います。
|
2.モノ揃えを阻害する現象と要因 |
冒頭の会話で象徴されるように、製造現場と調達現場では日々様々なやり取りが行なわれています。 ①製造現場で起こっていること ・ 日々モノ探しで工場内を探し回っている ・ 外注加工品の不具合による手直しの発生、修正(再製作)に伴う納期遅延が常態化している ②調達現場で起こっていること ・ 業者との納期調整に明け暮れている ・モノの確認で現場を飛びまわっている ・発注忘れ、欠品対応で緊急発注を繰り返している ・外注不具合品への対応で現場作業者との打合せが頻発している ・コスト低減に向けて新規業者とのネゴ、相見積で発注が遅れている ・製造からは常に、納期遅延・欠品で叱られている ・要員削減で、検品作業まで手が回らない
皆さんの会社でも、上記のような現象が起きているのではないでしょうか。 モノが揃わない原因はどこにあるのでしょうか。
|
|
モノ揃えの不具合は、多くの場合自社にその原因があると考えられます。モノ揃えの問題を解決するには、まず、自社に起因する要因を洗い出し、その改善を先行させるべきです。 自社起因の納期遅延を原因別に層別すると概ね下記のようになります。
①発注の遅れ 我々が指導に入ってほとんどみられるのが、発注忘れ(発注漏れ)です。後にも述べますが、調達業務は専門的知識や相手との信頼関係構築という名目で、属人的業務となっているケースがよくあります。この調達品は〇〇さんでないと進捗含めてわからない状態です。したがって、発注忘れ、納期遅延を周囲から確認できない状況になっているケースが多く見られます。 また、一品受注型製品のように図面の必要な調達品に関しては、設計の出図遅れにより、発注が遅れることが非常に多く見られます。
②発注条件の変更 発注後の図面変更や数量変更(特に増量)により調達先での部材調達が間に合わず、納期遅延につながるケースがあります。特に新製品、一品受注製品、製品改良の際に多く見られるケースです。客先との仕様管理、設計のデザインレビューが不十分であることが原因で生じることが多いようです。
③生産計画が稚拙 営業が無理な納期で受注するケースは多くの企業で見受けられます。もともと無理な計画で動くわけですから、調達品も間に合わないことが当然生じます。また、様々な理由から突然の計画前倒しがモノ揃えを悪くします。元の計画では間に合っていたものが、前倒しになり結果として生産タイミングに間に合わなくなるケースです。
④情報の局在 属人的な業務になっているケースで多く見受けられます。統合型の管理システムは存在しているにもかかわらず、個人で調達管理するデータベースを持っていることがあります。調達業務が縦割り(業者別、品目別)になっており、担当者ごとに独自の手順で業務がなされているため、周囲から業務をフォローし監視することが難しい状況になっているケースです。
⑤保管場所 調達は完了しているのに、モノが揃わないケースがあります。工場内にモノは届いているが、どこに保管されているかわからないといった場合です。まさか!と思われる方も多いでしょうが、結構多いのです。納入された品物を受入れ~移動~保管の場所、ルート、手順が明確でないために、日々探し回る羽目に陥ります。改善の基本である2S3定ができていないことが原因です。 最後に経営視点での阻害要因を挙げます。
|
|
企業経営(工場経営)の視点から見ると調達は即効的な成果を得やすいところが、現場にとっては大きな阻害要因になるケースです。
|
株式会社アステックコンサルティング |