第37回 「一品受注型企業のリードタイム短縮」
引き合いから受注確定までのリードタイム短縮の着目ポイント |
1.見積もり提出までの期間の短縮 |
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前回のコラムで一品受注型企業のリードタイム短縮にあたっては
の3ステージにビジネスプロセスを区分すると考えやすいと説明しました。 このステージでは営業がメインプレーヤーです。引き合いは、日頃の営業活動・種まき活動の成果です。但し受注確定するかどうかは会社としての総合力が問われます。顧客は多くの場合、製品知識豊富な専門家であり、顧客の信頼を得るためには精度の高い仕様書やそれ相応の技術に詳しいことがキーとなります。今の時代、相見積もりが当たり前で、機能(技術力)/信頼性(品質)/価格(コスト)/納期(リードタイム)/その他(サービス、サポート、デザインなど)が比較対象となります。基本的に技術力と品質はコストと正対する関係にあるため、総合判断すると優劣差がはっきりと出てきます。競合メーカー間で価格がほぼ同じ場合は機能的にも近いレベルとなり、その場合には納期やその他項目(サービス、デザイン等)が重要な競争条件になります。価格は指し値で決まる場合も多いため、近年は短リードタイムを売り物に受注を増やしている企業も多くなっています。 第1図に情報の流れのあるべき姿の一例を示します。 ここでは過去実績のあり/なしでパターン化した例を示しています。顧客との窓口は営業が務めますが、営業が自部署のデータベースから判断して答えられる場合は限られており、いかに設計/技術部門との連携が大事かお分かりいただけることと思います。
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2.仕様を早期に詰める |
このステージでの最大のポイントは仕様を早期に詰める点にあります。顧客先によっては正確な仕様書がもらえず、性能や価格などの「漠然としたイメージ」で見積もり依頼をかけてくる場合もあるので、正確な情報入手の取組を行わなければ仕様が確定せず、見積もりに正確性を欠くことにつながり、ひいては受注後の設計リードタイムの長期化につながることになります。その場合最終的にはすべて製造に皺寄せが行くことになります。また、基本的に見積もりのブレは「原価アップ」の方向であり、収益悪化の主原因になります。見積もり精度が低い企業は原価のブレを管理出来ないため、粗利管理で幅を持たせた管理しかできないため、絶対に儲からないと言えます。
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受注から設計図面作成までのリードタイム短縮の着目ポイント |
3.設計リードタイム短縮が一品受注のリードタイム短縮の死命を制する |
次に②受注から設計図面作成までのリードタイム短縮の着目ポイントです。このステージで論じる設計リードタイムが一品受注のリードタイムを決めるといっても過言ではありません。 『設計開発部門のリードタイム短縮』については非常に重要なポイントですので改めて別のコラムとして生産革新講座に掲載を予定しておりますので、このコラムではエッセンスのみを述べさせていただきます。 設計図面作成までのリードタイムが伸びると出図期限に間に合わなくなり、その結果、調達、製造の混乱を招くことになりますので、このステージがクリティカルパスとなるわけです。設計リードタイム短縮の視点は、①確定情報での設計、②基準日程による設計リードタイム管理、③見える設計、④設計方式の転換、⑤分業による設計の仕組み構築の5つに絞られます。
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4.5つの視点の捉え方 |
①確定情報での設計 とは前述の「仕様を早期に詰め」て、変更の無い仕様で設計を開始するということです。但しすべての仕様をスタート時に確定しておく必要はなく、基本構造設計、基本機械設計、電気設計、詳細部品設計、詳細電気設計などそれぞれの設計着手までに必須の項目情報を必ず入手することが大事です。そのためには項目のリスト化などで抜けが無いようにします。 また、営業と設計の連携が重要となります。
ここまで引き合いから設計図面作成までのリードタイム短縮の方法を論じてきましたが、次回は 計画立案から製品出荷ではどう考えるかを説明いたします。
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株式会社アステックコンサルティング |