第75回 生産管理システムを活かした改善
工場にとって生産管理システムは必要不可欠な時代 |
日々のコンサルティングの現場では多品種化による生産ロット縮小や、製品ライフサイクルの短期化、短リードタイム要求の増大などの影響を受けて、生産管理システムは製造業にとって欠かせないシステムの1つとなっています。では、生産管理システムを導入する狙いはどんなことがあげられるでしょうか。計画立案者の作業時間の短縮や、業務の標準化といった間接業務の効率化で終わっていないでしょうか。私たちコンサルタントの立場で見るとシステムの導入には多額の費用が必要となるので、一部門の業務効率化では非常にもったいなく、製造部門の適切な人員配置や、調達部門の経済的発注など工場全体の業務効率化ができて初めて生産管理システムによる改善が出来たと言えます。 |
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今回の生産革新講座では、ものづくりをする中で生産管理システムをどのように活用すれば、工場全体に広がる改善につなげることができるのかについて、触れていきたいと思います。 |
1.生産管理システム導入の目的とは |
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コンサルティングの現場では生産管理システムを活用できずに困っているという声を様々な製造業の工場から耳にします。原因の1つとして、目指すべき姿や管理ができているイメージができておらず、導入の目的が曖昧であることがあげられます。例えば、生産性向上を目標としているので“計画の情報精度を上げないといけない”そのためにシステムを導入するという言葉がでてきますが、どのように計画精度を上げるのか、計画精度が上がるとどのように生産性向上につながるのかが議論されていないことが多くあります。同じく、在庫削減のためにシステムで在庫の見える化を進めるが、見えたら後どうするかは未定のままの場合があります。ITツールの1つである生産管理システムは手段と言うことを真の意味で理解しておらず、手段が目的化してしまっているパターンです。目標である目指すべき姿を明確に示し、そこに向けたストーリーを検討し、どういった目的でシステムを導入、活用するかが上手に使って改善をしていくポイントとなります。 |
2.生産管理システムは工場の仕組みそのもの |
近年では様々なシステムが流通しており、多くの工場で使用しています。しかし、使用する工場は100社100通りでものづくりをしており、元の基幹システムや、インターフェイス、人員体制も異なります。そのような状態で、システムに現場を合わせこむと、使いづらいシステムになったり、あらゆる所で自己流の管理が発生して、システムを有効に活用できていない状態となります。逆に、現場にシステムを合わせこむと投資費用の増大や複雑なシステムとなってしまいます。理想は目指すべき姿に向けて、システムと現場の両方を合わせこんでいくことです。生産管理システムとは単なるシステムの導入とは違い、工場の仕組みそのものであるという認識が必要となります。 |
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3.システムを使いこなせない大きな要因 |
自部門システムを理解しておくのは勿論ですが、関連する他部門の情報処理業務を理解しておくことが必要となります。生産管理システムは製造業の工場の仕組みそのものですので、データは1つでも、他部門と連携をしていることを理解しておくことが必要です。例えば、マスタに安全在庫を設定する欄があり、設定はされているが、信用できないということになると、独自の発注タイミングや数量の発注をすることになります。この時点でシステムは使いこなせておらず、さらに、現場は本来なら決められた発注点や安全在庫に合わせて5Sを行いますが、上流が独自で動くため、まともな5Sもできない状態になります。最悪の場合、担当者の不在や確認モレで欠品を起こす可能性もでてきます。前後工程との関連が希薄であることがシステムを使いこなせない要因の1つとなります。 |
以上のように、生産管理システムを使った改善が進まない原因として、目指すべき姿が不明確であるという事と、システムは工場の仕組みそのものという認識がなく、システム内外の連携が取れていないことが考えられます。次回は生産管理システムをどのようにして構築していくのかについて説明していきます。 |
株式会社アステックコンサルティング コンサルティング本部 マネジメントコンサルタント 川津 武史 |