さて、この回では設計思想に準じた標準化と、標準化に対応した設計方式につきまして説明を行います。
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1.製造業における設計標準化に対する誤解
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多くの設計部門で、ありがちな傾向として「標準化」の重要性を感じている一方で「標準化」の誤解が発生しております。
- ① 標準化は自由(創造性)を束縛する
設計者からすると「標準化」を推進することにより、自由に設計できない恐れがあるのではないかと言う不安が根底にあります。エンジニアとしてのコスト意識が希薄なことに要因があります。
- ② 標準化は多品種少量生産型には適用できない
0(ゼロ)か1かの議論に終始したときに出る声です。標準化を適用できる範囲を明確にして丁寧に取り組む必要があります。
- ③ 標準化は技術進歩の妨げになる
“一度標準化すればお終い”という間違った考え方からの発想です。標準の改訂は誰も禁止していませんし、先行検討して標準化していくことも重要です。
- ④ 標準化しても守られない(結局顧客の言いなり)
営業、開発・設計、調達などの部門間のコンセンサスを得ないままに標準化した場合に出る声です。全部門のベクトル合わせが必要になります。
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以上のような言い分は標準化したくないためのいいわけであり、「標準化」こそ設計効率化、設計リードタイム短縮に対してなくてはならない要素です。即ち標準化こそ技術成果そのものであり、なされていなければ技術が確立されたとは言えないと思われます。
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2.製造業における4つの標準化について
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標準化とは「制限をかけること」であり、個人裁量(自由度)範囲を削減することです。人の考え方や行動に何らかの枠(制限)をかけることによって、個人差の減少、バラツキ幅の縮小を行っていく手法です。いわゆる多様性を排除する考え方です。人の発想は自由だからと放っておくと色々な方向に向いて行ってしまうので、何らかの制限をかけることで思考の方向性が出てまいります。これが標準化の基本です。さて標準化といいましても4つの標準化があります。
- ① 考え方の標準化
設計思想を明確にし、設計者の基本的な考え方を出来るだけ統一します。必要に応じて個別商品ごとの設計思想を作り、バラツキが発生しないようにします。
- ② 手順の標準化
作業の進め方や手順を明確にすることにより個人差を防止し、適切な進捗管理が出来るようにします。またポカミスの発生防止と負荷予測を実現します。
- ③ モノの標準化
実際のモノの標準化を進めるが、個別受注生産では商品ではなくユニット、モジュール、それらの構成要素である部品などの標準化を実施します。
- ④ 条件の標準化
モノではなく各種条件の標準化を進めます。塗装条件や表面処理条件、熱処理条件、面取り条件、検査条件、規格などが対象になり、これらは製造コスト低減に大きく貢献します。(図1)
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3.標準化に対応した設計方式
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設計効率や設計リードタイム短縮を図るために「標準化」は重要なキーになることは説明いたしました。ここではその「標準化」を目指したいくつかの段階の設計方式を紹介し、そのステップを説明します。
- ① 開発設計
ほとんど参考図がない場合の新規設計パターン、もしくは新しい技術要素を多く盛り込んだ設計です。かなりの設計工数とリードタイムがかかります。
- ② 新規設計
受注の都度設計を行うが、ある程度繰り返し性がある場合は参考図を参考にしながら設計します。共通部分は少なくほとんどを新規に作図します。
- ③ 流用設計
製品品種別に原図(過去設計図面)を設定し、基本は原図を使いながらも必要な部分だけを新規に設計する方法です。この方式で注意すべきことは、原図はあまり増やしてはいけません。
- ④ 分割設計
固定部分と変動部分を切り分け、通常は変動部分だけの設計で対応します。固定部分は数パターンに止め、品種数を増やさないことが重要です。
- ⑤ 組み合わせ設計
本体部分は数パターン、付属部分は十数パターンの基本図を作成しておき、受注の都度それらを組み合わせて完成図面を作成します。(図2)
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以上の設計パターンの中で、良く展開されていますのが「流用設計」の仕組みですが、ありがちな流用設計のレベルは個人スキルに頼る属人的な設計が多くみられます。このレベルから脱却するためにも早急にレベルの高い流用設計の仕組みづくりが必要になってまいります。しかし流用設計といいましても、進化レベルに応じて流用設計の段階は4段階ほどあります。
- (第1段階)
過去図を使用する流用設計であるが、特に使用する過去図は設定していません。設計者によって使用する図面はバラバラな状態の段階をいいます。
- (第2段階)
使用する原図のリストが出来上がっている状態ですが、複数の原図の中から選択するレベルをいいます。当然過去のトラブルは全て修正してあります。
- (第3段階)
品種群別に使用する原図が決まっており、設計する場合は全て決まった原図から出発します。特定顧客向けには専用の原図を作ります。
- (第4段階)
この段階が、流用化が最も進んだ段階で、原図のメンテナンスが十分出来ており過去図ではなく標準図という扱いになっています。
ここで標準化と流用化、その活用につきまして、一品受注業界の設計を例に取って説明させていただきます。一品受注業界では一般的には顧客要望事項を設計に反映させることが基本ですが、それを全て聞いていくと膨大な設計工数がかかります。そこでメーカー主導で決められることができる仕様は「標準化」しておき、顧客カスタマイズ部分は「流用化」していくようにすれば設計効率化に大きく寄与することができます。
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4.コンサルティングを通じてユニット化・モジュール化の推進
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標準化では、先ずユニット化とモジュール化に取り組みます。顧客要望やライバルメーカーとの競争で製品数が増えても、ユニット組合せで対応し部品数や管理工数を増やさない。ともすれば製品数が増えるのに比例して部品数が増えますし、部品数が増えると作業工数や設計工数が増えます。結果として管理コスト、在庫コスト、製造コスト、設計コスト、各種ロスコスト、LTが増大してまいります。つまり戦略なき商品増がコスト増の要因になりますのでぶれない設計推進活動が必要です。(図3)
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以上今回は設計改善の重要な柱である設計思想、標準化、流用化について説明いたしました。次回は、業務フロー改善と設計マネージメントについて説明いたします。
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株式会社アステックコンサルティング
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