第27回 「一気通貫生産のバリエーション化」
1.環境変化に対応した工場の生産の仕組み |
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1. 「外部環境」時代と共に製造環境は変わっている 市場は常に変化し、顧客要望が変わってきているのに十年一日のモノづくりを行っている製造現場が見受けられる。過去の量産前提のモノ作りではまとめ生産や大ロット生産をベースにしているため、世の中の流れの多品種少量化の動きに対応できず、納期遅れや在庫増大、コストアップの弊害に悩んでいることが多い。また、増産の局面でも過去の単純増産時では設備増強や人員補充で乗り切れたが、現在は製品毎の数量や製造条件のバラツキが大きく、そのままでは対応できない。 逆に減産時にも単純な人員削減では次の増産時に必要な技術が散逸して補填できないなど過去の考えが適用できない。また調達先との関係では従来は「共栄」の旗印の下、人間関係で無理を聞いてもらえたが、最近では正しい取引関係ではあるが厳しい要求に対し、ビジネスとしてできないものはできないという割り切った対応も見受けられる。 |
2. 「内部環境」従業員構成の変化/設備技術の進化 社内に目を向けると、バブル崩壊以降は雇用に関するタブーが薄れている。コスト重視により終身雇用制が崩壊し、正社員比率が低下して派遣社員や工程請負が増加した結果、教育が行き届かず製造技術の伝承ができないなど技術水準の低下に悩んでいる。また、製造設備のコモディティ化により生産技術が進化し、人の技能・スキルが不必要になったことも現場の技術力低下の一因になっている。 |
3. 生産品目に応じて仕組みを変える必要性 現在のモノづくりにおいては外部・内部環境要因への対応も含め、たとえば見込み生産・在庫補充型生産・受注生産・受注設計生産のそれぞれの製品に対してすべてを網羅できる生産の仕組みはないと言える。最高のパフォーマンスを発揮するには製品毎に異なるビジネスモデルに応じて受注~製造~出荷の最適な方法を採用すべきである。その中で、肝心なことは、生産の仕組みにバリエーションを持たせることであり、それが同業他社を差別化する大きなストロングポイントになり得る。 |
4. 「時間軸」は普遍の価値観 生産活動は製品を通じて顧客満足を提供するものである。顧客満足の視点で考えるとたとえば赤字経営を招くような行き過ぎたコストダウンは企業の永続性を損ない、製品の継続的な提供という基本的な顧客満足を満たさない。また、究極の品質レベルの追求は、逆にコストアップをもたらすことは容易に想像がつくであろう。 しかしながら、「リードタイム短縮」という「時間軸」の視点はどのような製造環境下でも「欲しいものを欲しい量だけ欲しい時に」という顧客満足に必ずつながる唯一の指標である。すなわち普遍の価値観として工場のモノづくりの基本の仕組みとして据えることが可能である。そのベースの上にそれぞれのビジネスモデルに応じた仕組みを構築することこそ、現在の工場に求められる生産の仕組みと言える。そのリードタイム短縮を実現するための具体的な手法が「一気通貫生産方式」である。 |
日刊工業新聞社刊「工場管理」2016 VOL.62 No.3 掲載記事に加筆訂正 株式会社アステックコンサルティング |