第72回 品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る
前回のコラムで品質保証と品質管理の違いを説明しましたが、今回は品質保証の機能と役割に関して詳しく説明致します。 |
1.品質保証(Quality Assurance)の役割 |
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お客様に対して製品品質と活動の担保を行い、社内ではお客様に成り代わり品質にかかわる全活動に監視と牽制を行うことが、品質保証の大きな役割です。具体的には、商品企画段階から市場まで、全てのステージで品質面に関与しなければなりません。品質は設計で決まるとも言われ、設計初期段階での品質のつくり込みが重要になります。とかく設計部門は、見極めが不十分な技術要素の導入や、安いだけの新規部品メーカを採用することがあります。また習慣や言語の異なる海外拠点の開発部門が担当する新製品もあります。品質保証担当者が設計者と同レベルの技術力を持つのは難しいのは事実ですが、商品ライフサイクルの短い現代においては、品質保証部門には製品開発の初期段階で、たくさんのリスクの芽を摘んで、品質のつくり込みをすることが益々求められます。確かに社内、特に設計部門からは煙たがられる事が多い反面、客観的に適切な指摘をすることで結果的に感謝されることもあります。常にお客様の感性を含む市場環境と、技術の変化の両方に対して敏感となり、両者の架け橋とならなければいけない職能です。 |
① 会社全体の品質統括機能 トップマネジメントからの品質戦略や目標を達成させる為、具体的な方針・目標の設定と進捗状況の監視と定期的なトップマネジメントへの報告が求められます。また実務レベルでは、個別の課題解決支援や指導対応も含まれます。
② 品質システムの整備 品質マネジメントシステムの設定/維持/未然防止/再発防止の改善を行う為の品質保証体系の整備を行います。部署毎の品質目標の設定や目標達成度を見ながらプロセス改善の促進も行います。
③ CS(顧客満足)の達成 お客様は、製品の機能や品質に対して目標を達成する為に対価を払ってきています。多様化してきているお客様の要望に応える為の品質マネジメントシステムの構築を行います。
④ 新製品開発ステップに於ける関与 ●4-1.商品化決定会議 つくり手の理論だけでの商品化を防ぎ、顧客視点での商品化になっているかという観点で、商品企画内容を見定めます。特に間違った使い方に起因する市場クレーム発生や使い方がわからない等の顧客満足度に関連する課題があれば、この時点で解消する必要があります。
●4-2.開発・設計 &実際に商品を購入されるお客様を想定した設計になっているか見極めることが求められます。市場の声を聴き、各種の技術レポートや過去の失敗事例、対応必要な法規・規制を確認し、他社製品とのベンチマークも行います。 製品の垂直立ち上げを実現するためには、この段階で生産部門の有識者を交えて生産設計を行うことが効果的です。製造の安全性、容易性、安定性を検証することを主な目的とします。
●4-3.DR(デザインレビュー) DRの開催に当たっては、設計の所属長、有識者、ベテランは勿論、品質保証など設計以外の関連部門の参画が必須となり、形式的なイベントとならないように注意することが重要です。設計以外に、企画から製造・物流・販売・サービスに至るまでの品質を確保するための見極めを体系的に行う必要があります。この段階でトラブルを予測し未然防止を効率的に行うための手法として、FMEA(故障モード影響解析)があります。FMEAには設計FMEA(DFMEA)と、工程FMEA(PFMEA)があり、それぞれの業界、企業において様々な取り組み方法の工夫がなされています。
●4-4.設計引継ぎ会議 設計が完了し、生産工場部門への正式引継ぎになります。品質保証部門は設計試作品を評価し、引継ぎレベルに相当するか客観的な判断を関連部門へ報告義務があります。
●4-5.量産試作 工場で量産試作されたセットの評価は、主に工場部門で実施されますが、当然関連部門での出来栄え評価も実施され、企画意図・設計意図通りの仕上がりになっているか確認されます。
●4-6.量産化決定会議 量産試作品の出来栄えに問題なく、製品化に問題なければ経営層による量産化決定の後、量産が開始されます。
●4-7.出荷確認会議 量産品の1stロットでの出来栄え評価、信頼性試験に問題なければ、経営層により出荷認定され、出荷されます。
●4-8.市場品質監視とフォロー 品質保証部門は、CS部門と共に市場品質を監視します。 |
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⑤ 市場品質管理(市場と会社の仲介役) CS部門と共に市場の品質状況を監視し、場合によっては、半年から一年の市場初期流動活動を行い、問題点の早期発見と対策導入を行い、市場品質の早期安定化を目指します。お客様の声や市場の実態を会社全体にフィードバックすることや、市場問題のクレーム処理や不良品の市場処置があります。
⑥ 品質監査 各部署における品質保証業務が適切に実施されたかを経営トップに成り代わり、客観的に確認します。対顧客部門であるためこの独立性が特に重要となります。大別すると以下の2点です。
●6-1.製品の品質監査 製品開発ステップの中で、試作段階、量産試作、出荷前などいくつかのゲートポイントでの出来栄え評価を行う。
●6-2.製品システム監査 品質マネジメントシステムの整備状況や実施状況を監査します。システム適合性監査(ISO9000等)とシステム有効性監査(顧客満足度の有効性があります。
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2.外注管理 |
外部からの部品購入、キット組立、完成品のEMSやOEM等、海外のメーカとの取引もあります。購買専門の品質保証部署を設けている会社もあるように、専門性が要求されます。取引の前には品質監査を実施します。特に自助改善能力があるかの見極めが大事なります。取引先のレベルによっては定期的監査の実施も必要となります。外注においても初期評価、初期流動評価、量産化の手順が重要です。量産実績が長いもので品質の安定が十分に見極められていても全数受入検査を継続しているといった事例が見受けられますが、これも品質に関する機能の定義が不明確であることが背景にあるようです。また取引開始までには、売買契約書や品質契約書の取り交わしが必要です。補償を伴うトラブル発生時には契約書があってももめることもあり要注意です。 |
以上が品質保証部門に於ける役割と機能です。次回は、品質管理の業務に関して詳しく説明いたします。 |
株式会社アステックコンサルティング |