これはそもそも、ものづくりの仕組みに起因する見えないコストにいかに気付いて改善対象とするか、という話です。
たとえば、営業からの受注情報の精度がわるく生産開始の3日前になっても、まだ生産数が確定しないといった事例です。これによる問題点としては、生産数が決まらないため材料を余分に手持ちしておく必要があり、置き場所の確保が必要だし、仕掛かり品の積み増しによる在庫金額のアップ、また、作業工数が確定しないので余剰となるかもしれない人員を抱えておくリスク等が存在します。
また特急品が当日、突然割り込んで入ってくるということも十分あり得ます。もともと立てておいた生産計画がムダとなり計画の立て直しが発生します。材料も手持ち分では不足し、調達部門は納期調整に奔走することになるし、緊急発注、高額調達となることも多々あるでしょう。また、現場では予め準備しておいた前段取りがムダとなり、一からの準備をせざるを得なくなります。また、特急品を優先的に流すため各工程間には先行投入品の仕掛かりが停滞します。仕掛かり置き場があふれ廊下や作業エリアが物置になり作業効率をさらに下げていきます。これに伴い、価値を生まない運搬作業も頻繁に行われることになります。
これらは最終的に直接作業者や間接者の残業増大となって具現化されます。また、納期遅延の原因になりユーザーからの信用失墜にもつながりますし、ムダ業務による作業時間の圧迫でミスの頻発や品質事故にもつながるものです。全てがコスト増大要因です。
①仕組み改善は自社だけではできない?
このような見えないコストにまずは気付く必要があります。見えないけれど確かに存在することに気付き改善の対象とすることが重要なのです。この問題の解決方法としては確定計画の運用ということになります。つまり営業は顧客からの情報をたとえば生産開始1週間前には確定させる仕組みの構築(=情報精度の向上)が必要であり、また、工場としては、1週間分の生産計画は確定計画として固定化し変更を認めないとするルールを運用することになるでしょう。これにより前述の多くのムダ(見えないコスト)が一掃されることになります。
ただし、この計画の確定化、営業情報精度の向上は相手(ユーザー)があるわけですから自社の努力だけでは解決できるものではありません。相手との信頼関係の構築から始まり、長期間を掛けてお互いの仕組みの見直しを推進していくしかありません。そんな中、自社の努力だけで計画の確定化を推進して見えないコストを削減していく手法が存在します。
それはリードタイムの短縮です。設計/生産の着手から完了までに掛かる時間を短縮するということです。これが見えないコストを大幅に低減させるということに気付かなければなりません。
②リードタイム短縮の意義
製造リードタイムを短くするというと、営業的にはものを売りやすくなりますし、工場としては工程間の仕掛かりが減り、現場がスッキリする、運転資金が確保できる/設備投資に資金を回せる、資金効率(在庫回転率等)が向上する等の好影響が考えられます。
しかし、実はそれと同等か、もしくはそれ以上に大きな効果として計画変更頻度の減少を挙げることができます。つまり、短リードタイムでものを作るということは、生産の着手を遅らせることが可能であるということになり、ユーザーからの突然の注文数変更、仕様の変更、納期の変更等が舞い込んできても生産計画をいちいち見直す必要性がなくなる、と言うことです。
たとえば、通常の製造リードタイムが45日の製品の場合で、ユーザーからの注文変更が25日前に入ってきたら既に生産を着手しているわけですから計画の見直しが必要になります。この見直しを行うことにより前述したような多くの見えないコストが発生することになります。ところが、もし、この製造リードタイムが20日だった場合はどうでしょうか?まだ製造工程に材料を投入する前の段階での計画変更ですから、工場が受ける影響は最小限に留めることができるのです。つまり、見えないコストが大幅に知らぬ間に低減されているということになります。
また、ユーザーからの注文の変更は納期が近づくにつれて減少していくものです。これはユーザーも自社のユーザーに対して提示している出荷計画を守る必要があるため計画精度を高めているから、と考えられます。そう考えるといかに短納期でものづくりをするかが、計画変更を回避するのにはもっとも手っ取り早い方法であることが理解できるでしょう(下図)。
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