第97回 経営成果につながる小集団活動

今回は、「課題達成型小集団活動」とはどのような小集団活動か説明していきます。課題達成型小集団活動とは、経営目標からブレークダウンされた目標や活動テーマに取り組む小集団活動です。従って、小集団自体を経営目標達成のための下部組織として明確に位置づけ、目標値や活動テーマは原則としてトップダウンで指示されます。



1.課題達成型小集団活動のポイント

①組織構造の明確化

職制を中心とした組織構造の中で、小集団を会社業務遂行のための最も小さな集団と位置づけます。
原則としては係や班単位が中心となりますが、場合によっては他チームと連携して連合チームを作る場合もあります。また、各チームにはチームリーダーと監督責任者(管理職)を置き、活動の的確な運用と進捗管理、アドバイス等を行っていきます。


生産革新第20-5



②取り組むべき課題の明確化

課題達成型小集団は経営目標達成のための下部組織です。従って、取り組むべき課題は、経営目標からブレークダウンされたものになります。
そのためには、まず経営トップが方針を出して、その方針に対して各部門が目標値と指標を出し、そこから更に目標がブレークダウンされていって、最終的に小集団の取組むべき課題が決まります。こうすることで、小集団活動と経営課題をつなぐことができ、小集団の成果が経営目標にどのように寄与しているかを明確にすることができます。


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③会社業務としての明確な位置づけ

改善活動の成果を期待する以上、改善活動は会社業務であると明確に位置づける必要があります。
近年はサービス残業などに対する規制も厳しくなっているため、自主的活動ではなく業務活動であると明確に規定した方が問題は少なくなります。過去のような「自主的に会社のための改善活動を行っていく組織」などという規定は現在ではほとんど通用しないと考えるべきです。


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④チーム間の連携

課題達成型小集団活動の特徴として「チーム間の連携」があります。通常の小集団活動では、各チームは単独で行動しますが、課題達成型小集団活動ではテーマに応じて連携を取りながら活動を遂行していきます。例えば「仕掛り削減」という改善テーマがあった場合、上流工程と下流工程のチームが連携を取ることにより目標を達成していきます。


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⑤小集団活動の適用範囲を広げる

従来型の小集団活動が小改善や段取り替え時間短縮などいわゆる「現場改善」と呼ばれる分野の改善活動を中心に行ってきたのに対し、課題達成型小集団活動では「現場改善」を基盤におきつつも、連携チームを中心として「仕組み改善」に積極的に取り組んでいきます。

仕組み改善とは
モノの流し方、人の行動パターン、上下工程との関係などひとつの理想を実現する為に、複数の工程を連関させて改善していくのが仕組み改善である。新たなものづくりの仕組みを作り上げていくことで成果を確実に定着させていく。モノや情報の流れ自体を変えていくため影響も大きいがより大きな成果を出すことができる。



⑥責任の明確化

活動においては、責任を明確にしておくことも重要です。特に活動遂行責任と成果達成責任を明確に分けておくことがポイントです
活動遂行責任は、計画として決めたことを遂行するという責任で、チームリーダーが責任者ということになります。チームメンバーを率いて与えられた課題に積極的に取組んでいくという責任です。一方、成果達成責任は、改善活動に対して成果を出すという責任です。改善活動は最終的には成果を出さなければ意味がないので、目標に対する成果を出すということが重要になります。管理職や任命責任者がその責任を負うことになります。管理職は、メンバーが動かないから成果が出ませんでは済みませんので、どうすれば成果が出るかということを常に考えていかなければなりません。


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また、責任を持たせる以上は権限を持たせることも必要になってきます。責任と権限は一致させておかなければなりません。権限より責任が大きい場合は無理な仕事を押し付けられているように感じますし、責任より権限が大きい場合は、無責任な行動を引き起こす要因になります。

2.課題達成型小集団活動の4ステップ

課題達成達成型小集団活動では、ものづくりの仕組みの改善を行いますが、それは一朝一夕でできるものではありません。まずは仕組み改善を行うための「改善する力」を養っていく必要があります。そのために我々のコンサルティングにおいては、課題達成型小集団活動は、準備期間、ミクロ改善期間、テーマ改善期間、ストラクチャー改善期間という4つのステップで活動を進めていきます。各ステップを確実に遂行することにより、より大きなテーマに取り組むことが可能になってきます。
活動開始後すぐに仕組み改善を要求する企業もありますが、改善の実力が十分についていない時点で仕組み改善を目指してもうまく行かない場合が多いです。改善で大切なのは着実なステップを踏むことと参加者全員のモチベーションを上げることが重要です。

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①ミクロ改善での取り組み例

ミクロ改善ではトップより改善の方向性を指示し、各チームはその方向性に応じて改善を行っていきますが、指示項目以外でも日常業務上の問題点や日頃より不便を感じている問題点について解決していきます。

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②テーマ改善の取り組み例

ミクロ改善が日々改善を前提にしているのに対して、テーマ改善では3ヶ月程度の単位で取り組めるテーマを設定し、テーマからの課題展開、評価指標及び目標値の決定を行い、改善を推進していきます。いわゆるデザインアプローチ手法です。


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③ストラクチャー改善の取り組み

ストラクチャー改善ではあるべき姿から課題展開を行い改善テーマを設定しますが、その中でもモノの流れや情報の流れに対する新たなものづくりの仕組み構築など、工場レベルの大きな課題にチャレンジします。当然目標値を明確にし、目標達成に向けた取り組みとなります。また、必要に応じてチーム間の連携も行います。


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以上、今回は「課題達成型小集団活動」とはどのような小集団活動かというご紹介をさせて頂きました。次回は、改善活動を実施するにあたって、活動を活性化させるためのポイントを紹介していきます。


株式会社アステックコンサルティング
コンサルティング本部 コンサルタント 上原 剛
生産革新講座 連載
第104回  新製品の企画開発の進め方(3/3)(2023.3.13)
第103回  新製品の企画開発の進め方(2/3)(2023.2.20)
第102回  新製品の企画開発の進め方(1/3)(2023.1.30)
第101回  原価設計と運用(3/3)(2023.1.12)
第100回  原価設計と運用(2/3)(2022.12.19)
第99回  原価設計と運用(1/3)(2022.11.28)
第98回  経営成果につながる小集団活動(3/3)(2022.11.16)
第97回  経営成果につながる小集団活動(2/3)(2022.10.18)
第96回  経営成果につながる小集団活動(1/3)(2022.9.26)
第95回  調達を機軸とした企業変革力の強化(3/3)(2022.9.5)
第94回  調達を機軸とした企業変革力の強化(2/3)(2022.8.23)
第93回  調達を機軸とした企業変革力の強化(1/3)(2022.7.25)
第92回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(3/3)(2022.7.4)
第91回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(2/3)(2022.6.13)
第90回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(1/3)(2022.5.30)
第89回  間接部門の働き方改革(3/3)(2022.5.18)
第88回  間接部門の働き方改革(2/3)(2022.4.14)
第87回  間接部門の働き方改革(1/3)(2022.3.25)
第86回  生産性指標の設定と活用方法(3/3)(2022.2.28)
第85回  生産性指標の設定と活用方法(2/3)(2022.2.7)
第84回  生産性指標の設定と活用方法(1/3)(2022.1.19)
第83回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(3/3)(2021.2.22)
第82回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(2/3)(2021.2.8)
第81回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(1/3)(2021.1.25)
第80回  生産設計によるコストダウン(3/3)(2021.1.12)
第79回  生産設計によるコストダウン(2/3)(2020.12.21)
第78回  生産設計によるコストダウン(1/3)(2020.12.7)
第77回  生産管理システムを活かした改善(3/3)(2020.11.24)
第76回  生産管理システムを活かした改善(2/3)(2020.11.9)
第75回  生産管理システムを活かした改善(1/3)(2020.10.27)
第74回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(4/4)(2020.10.12)
第73回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(3/4)(2020.9.29)
第72回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(2/4)(2020.9.14)
第71回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(1/4)(2020.8.24)
第70回  指標管理による業務革新の「見える化」(3/3)(2020.8.3)
第69回  指標管理による業務革新の「見える化」(2/3)(2020.7.20)
第68回  指標管理による業務革新の「見える化」(1/3)(2020.7.6)
第67回  部門・組織を越えた改善の進め方(3/3)(2020.6.22)
第66回  部門・組織を越えた改善の進め方(2/3)(2020.6.8)
第65回  部門・組織を越えた改善の進め方(1/3)(2020.5.26)
第64回  全体最適型改善のススメ(3/3)(2020.5.15)
第63回  全体最適型改善のススメ(2/3)(2020.4.27)
第62回  全体最適型改善のススメ(1/3)(2020.4.6)
第61回  攻めの設備保全(3/3)(2019.8.5)
第60回  攻めの設備保全(2/3)(2019.7.22)
第59回  攻めの設備保全(1/3)(2019.7.1)
第58回  食品メーカーの生産性革命!(3/3)(2019.6.17)
第57回  食品メーカーの生産性革命!(2/3)(2019.6.3)
第56回  食品メーカーの生産性革命!(1/3)(2019.5.20)
第55回  コストの見える化(3/3)(2019.5.8)
第54回  コストの見える化(2/3)(2019.4.15)
第53回  コストの見える化(1/3)(2019.4.1)
第52回  強い管理職をつくる!(3/3)(2019.3.18)
第51回  強い管理職をつくる!(2/3)(2019.3.4)
第50回  強い管理職をつくる!(1/3)(2019.2.18)
第49回  設計開発部門改革の第一歩(5/5)(2019.2.4)
第48回  設計開発部門改革の第一歩(4/5)(2019.1.21)
第47回  設計開発部門改革の第一歩(3/5)(2019.1.7)
第46回  設計開発部門改革の第一歩(2/5)(2018.12.17)
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(3/3)(2013.8.12)
第16回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2/3)(2013.7.5)
第15回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(1/3)(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)

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