活動報告

生産革新講座

第33回 「モノを揃えてなんぼの調達・外注管理」

生産現場の改善指導をしていると、必ずと言っていいほどぶち当たるのが、モノづくりの現場にモノが届かない、という問題です。製造会社にとって製品を作らないことには商売にならないわけですから、最優先されるべきであることは、論を俟たないにも拘らず、原料・部品が現場に届かないからモノづくりできないことが日常茶飯事なのはどういうことでしょう。

今回は、モノづくりの現場における調達、モノ揃えという点について触れたいと思います。

 

皆さんの工場では以下のような会話がなされていませんか?
(ある日の朝の出来事)
製造課長:「材料(部品)が入っていない。このままでは工程が止まる。」
調達担当:発注は既に行っています。
製造課長:どうして入ってこないんだ?
調達担当:要求納期は連絡したんです。
製造課長:A社(調達先)の回答は?
調達担当:回答納期は1週間後だったんですが、前倒しを要請してました。
製造課長:それに対しては?フォローはしたのか?
調達担当:メールでお願いしてはいたんです。
製造課長:先方に出向いてでも、ともかく間に合わせるのが購買だろ。
調達担当:すみません。すぐに連絡して結果を報告します。

    (毎日毎日、現場から文句ばかり言われている。会社に来るのがつらい・・・・。)

 

(4月初旬のある日)
工場長:今期は事業部トップより調達コストの5%削減が指示された。当工場では、調達品を一律5%CDすることにする。
調達担当:またか!私の担当している調達品はこれまでもずいぶんCDしてきたんです。これ以上はかなり厳しい。
調達課長:仕方がない。ともかく、一度業者を呼んで話をしてみよう。
調達担当:私の調達品では、このところ品質不具合が多発しています。現場からは、もっとまともなモノを入れさせろ、と毎日のように言われているんです。安くしろ、品質は上げろでは、今後付き合ってもらえなくなってしまいますよ。

 

何故このような会話が繰り返されるのでしょう。何かおかしな気がしませんか?

三回シリーズの第一回目、今回は、調達と外注活動における現状と課題、そして調達・外注の定義について掘り下げてみましょう。


1.企業経営に大きく影響する調達機能

製造業を取り巻く環境を考えると、最終顧客の要求が多様化し、多品種少量生産への流れが強まってきています。また、製品ライフサイクルの短寿命化に伴い、余分の材料、貯蔵品を持つことは廃棄コストの増大に繋がるリスクを抱えることになります。さらに、顧客からは短納期対応への要求が強まり、製造現場では調達準備リードタイム(L/T)、調達L/Tそして製造L/Tの短縮が求められています。コスト低減要求に起因する海外調達の増加は、さらに調達L/Tを長期化させる要因となっています。
このような、外部環境の変化によるモノ揃えリスクの増大は、調達部門の対応だけでは難しい状況になってきています。事業の全体戦略(経営戦略)を構成する機能戦略の一つとして調達戦略を位置づけ、各戦略を整合させた対応を図る必要があります。

調達活動が不安定化すると、その歪は様々な場所に現れます。調達品の品質不安定化は、不具合対応コストの増大、納期遅延さらには顧客不満足の発生を招きます。コスト不安定化は、新規取引先の探索や価格交渉の多発による調達準備コストや管理コストを増大させ、調達価格とは別の「見えないコスト」の増大に繋がり、利益を圧迫して価格競争力の低下を引き起こし、市場シェアの低下を招きます。そして、納期不安定化は、生産計画変更や仕掛増大等の納期遅延対策を誘発して生産工程を混乱させるだけでなく、顧客リードタイムの長期化を生じさせます。このように調達機能不全は、工場はもとより事業全体に大きな影響を与えています。特に工場部門では、納期の不安定化による生産性への影響が深刻です。納期が安定しないと、生産計画そのものに対する信頼性を損ない、現場における部分最適な再計画が発生します。これにより工程間に仕掛が溜り、工程リードタイムを長期化させます。納期遅延が発生すると、ライン全体での再計画が必要となり、再計画、納期再調整、仕掛発生を通じて、工場としての生産性を低下させ工場損益の悪化を招きます。


生産革新第20-5

工場はモノづくりの場であり、つくるモノと使うモノがあって初めて稼働する仕組みになっています。調達機能は使うモノをタイムリーに揃えることであり、モノづくりに必須のサポートをする役割です。では、サポートすべきお客様は誰か、直接かつ最大のお客様は、製造現場ではないでしょうか?こう考えると、現在調達部門がなさねばならないことの本質が見えてくると思います。


2.モノ揃えを阻害する現象と要因

冒頭の会話で象徴されるように、製造現場と調達現場では日々様々なやり取りが行なわれています。

@製造現場で起こっていること

 ・ 日々モノ探しで工場内を探し回っている
 ・ 調達部門に対して必要な部材の納期確認を日々行っている
 ・ モノが揃わないので、現場で生産計画の組み換えが行われている
 ・ 生産計画の変更が形骸化している→生産計画を信じていない
 ・ モノづくりの停滞により工程内外に仕掛品が溜まっている

 ・ 外注加工品の不具合による手直しの発生、修正(再製作)に伴う納期遅延が常態化している

A調達現場で起こっていること

 ・ 業者との納期調整に明け暮れている

 ・モノの確認で現場を飛びまわっている

 ・発注忘れ、欠品対応で緊急発注を繰り返している

 ・外注不具合品への対応で現場作業者との打合せが頻発している

 ・コスト低減に向けて新規業者とのネゴ、相見積で発注が遅れている

 ・製造からは常に、納期遅延・欠品で叱られている

 ・要員削減で、検品作業まで手が回らない

 

皆さんの会社でも、上記のような現象が起きているのではないでしょうか。

モノが揃わない原因はどこにあるのでしょうか。

 

生産革新第20-5

モノ揃えの不具合は、多くの場合自社にその原因があると考えられます。モノ揃えの問題を解決するには、まず、自社に起因する要因を洗い出し、その改善を先行させるべきです。

自社起因の納期遅延を原因別に層別すると概ね下記のようになります。

 

@発注の遅れ

我々が指導に入ってほとんどみられるのが、発注忘れ(発注漏れ)です。後にも述べますが、調達業務は専門的知識や相手との信頼関係構築という名目で、属人的業務となっているケースがよくあります。この調達品は〇〇さんでないと進捗含めてわからない状態です。したがって、発注忘れ、納期遅延を周囲から確認できない状況になっているケースが多く見られます。

また、一品受注型製品のように図面の必要な調達品に関しては、設計の出図遅れにより、発注が遅れることが非常に多く見られます。

 

A発注条件の変更

発注後の図面変更や数量変更(特に増量)により調達先での部材調達が間に合わず、納期遅延につながるケースがあります。特に新製品、一品受注製品、製品改良の際に多く見られるケースです。客先との仕様管理、設計のデザインレビューが不十分であることが原因で生じることが多いようです。

 

B生産計画が稚拙

営業が無理な納期で受注するケースは多くの企業で見受けられます。もともと無理な計画で動くわけですから、調達品も間に合わないことが当然生じます。また、様々な理由から突然の計画前倒しがモノ揃えを悪くします。元の計画では間に合っていたものが、前倒しになり結果として生産タイミングに間に合わなくなるケースです。

 

C情報の局在

属人的な業務になっているケースで多く見受けられます。統合型の管理システムは存在しているにもかかわらず、個人で調達管理するデータベースを持っていることがあります。調達業務が縦割り(業者別、品目別)になっており、担当者ごとに独自の手順で業務がなされているため、周囲から業務をフォローし監視することが難しい状況になっているケースです。

 

D保管場所

調達は完了しているのに、モノが揃わないケースがあります。工場内にモノは届いているが、どこに保管されているかわからないといった場合です。まさか!と思われる方も多いでしょうが、結構多いのです。納入された品物を受入れ〜移動〜保管の場所、ルート、手順が明確でないために、日々探し回る羽目に陥ります。改善の基本である2S3定ができていないことが原因です。

最後に経営視点での阻害要因を挙げます。

 

生産革新第20-5

企業経営(工場経営)の視点から見ると調達は即効的な成果を得やすいところが、現場にとっては大きな阻害要因になるケースです。
調達活動は、企業のコスト競争力、収益力の面で非常に重要です。特に成熟した市場では営業活動以上に収益面で重要です。つまり、調達コストを下げられれば、その分利益に転換できるためです。ですから、経営者は調達コスト削減を強く要求します。一方で、生産現場では、モノがない、納入品不具合で工程ストップ。仕掛品で工場にモノが溢れ、生産性が低下し、客先納期に間に合わないといった事態に陥っています。結果として、目に見える調達のコストは削減されたけれども、却って損益が悪化したというような笑えない話が実際に起きています。コスト削減優先の調達活動を求める企業トップの姿勢にも問題があります。自社の現状の実力を踏まえて、何が最優先の課題なのかを明確にすることが必要となります。

また、調達の重要性は理解されてはいますが、属人的業務に陥り、組織としての業務になっていないケースも経営の視点から考える必要があります。組織としての業務とは、少なくとも、同じツールで、同じ手順でそして互いにフォローしリカバリーできる体制で業務遂行されていることです。調達業務が属人的に陥っていると認識されるのであれば、組織としての業務への転換を図ることが重要となります。これはトップダウンで改善しなければ、進みません。

 

株式会社アステックコンサルティング
コンサルタント 鎌田 敦之
生産革新講座 連載
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)NEW!
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(3/3)(2013.8.12)
第16回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2/3)(2013.7.5)
第15回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(1/3)(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)