活動報告

生産革新講座

第29回 「一気通貫生産のバリエーション化」

3.一気通貫生産方式のバリエーション化

1. 全ビジネスモデル共通の仕組み

まず、どのようなビジネスモデルでも一気通貫生産方式を実現するためのモノ作りの基本の仕組み構築が必要である。計画立案・進捗管理・指標管理・調達管理・情報共有化の仕組み構築がそれにあたる。これらの仕組みの有機的な連携がモノの流れと情報の流れのコントロールを可能にする。 計画立案の仕組みとしては、信頼できる生産計画を提供するための「計画体系」と「生産管理システム」の整備が不可欠である(図3)。信頼できる生産計画とは安易に計画を変更させず、権威のある確定計画とし、計画どおりに作れば問題が発生しないという安心感をもたらす生産計画のことである。具体的には「大日程計画・中日程計画・小日程計画それぞれの役割明確化」「基準日程による管理」などを行う。特に各工程の所要時間を明確にし、生産着手時間や工程通過時間を決め各工程間で停滞が発生しないように立てた詳細な基本工程計画である「基準日程」の設定で生産計画へ落とし込むことで、製造リードタイムを制御し、成り行きに任せない生産計画を実現できる。

生産革新第20-5

生産計画を立てるだけではなく管理のPDCAを回すためには進捗管理と指標管理の仕組み構築が不可欠である(図4)。前章で述べたように「時間軸」の視点がそのポイントとなる。計画安定性確保のため、計画の進捗状況を着手と完了の時刻記録による進捗管理を行い、「リードタイム指標」として「工程リードタイム」や「工程通過率」、「工程計画遵守率」の各指標管理で計画からのズレを監視する。もし、計画が守れないものであればフィードバックして守れる計画に修正することも肝要である。さらに「設備指標」「品質指標」「生産性指標」「調達指標」などの指標管理の仕組みで明確な目標を持って生産を行うことが望ましい。

生産革新第20-5

調達について言えば、その成否が計画遵守のキーポイントになる場合が少なくない。調達リードタイムに応じた手配が計画立案時の部品・材料と製造との同期化を実現する基本の考えになるが、その管理の仕組みとしては、納期遵守率管理とそれを支える外注管理方針の整備が重要である。納期遵守率は製造リードタイムに準拠した時間軸で管理すべきであり、基準日程を「日」のベースで組む場合は「定日・納期納入率」(納入指示日に納品する比率、指示より早い納品も不可)による管理が必須となる。
計画を統制するにあたっては、複数の部署間での情報共有化の仕組みとして「会議体系」の整備が重要である。長年の企業活動の中で似たような会議が増え、それぞれの会議の役割が不明瞭になっていることが多いので、今一度見直すことが情報の不徹底や情報の隘路を作らないことにつながる。

仕組み構築では新システムの導入が目玉になることが多いが、それは本末転倒であり、まず仕組みができてからシステム化することが重要である。人間系で運用できないことは新システムを入れても絵に描いた餅になりかねない。そういう意味でも一気通貫生産方式では生産管理の中核であるモノの流れと情報の流れを再構築するので、生産管理システム導入時に期待されるような効果を確実に達成できる。つまり、一気通貫を導入すれば高額な生産管理システムを買わなくても目的を達成することは可能なのである。

2. ビジネスモデル毎に考慮すべき仕組み

以上の共通の仕組みに加えて、ビジネスモデル毎に一気通貫生産方式導入に必要な仕組みがある。まず、「見込み生産:販売予測から生産。少品種で繰返し性高い」の場合はいかに正確な販売予測を行うかが鍵となる。需要のバラツキの量変動(季節変動、月内変動、日単位変動、特異点、顧客層の変化による売れ筋変化)と需要のバラツキの種類変動(新商品、多品種化、商品バリエーションによる売れ筋変化)を見極めて、実需を考慮した長期計画の立案、生産能力の制御、人員の手配、勤務体系の仕組み化・運用が重要である。
「在庫補充型生産:出荷量に応じて生産。少・中品種で繰返性高い」では出荷量(在庫量)の変動状況の把握と生産指示への連動が重要である。特に海外に販売拠点がある場合はグローバルな在庫状況[海外拠点の在庫、洋上在庫、出荷倉庫での在庫(港湾での在庫含む)、工程内の在庫]の正確な把握と出荷予測をいかに連動させるかの仕組み作りがキーポイントである。見込み生産や在庫補充型生産では増産/減産時にいつブレーキ/アクセルを踏むかの判断が肝要である。経験豊富な人の勘に頼った判断から誰でもが判断できるようにする仕組みの構築が最終的な目標である。
「完全受注生産:確定受注や内示情報で生産。受注時に材料・原料を発注。多品種で繰返性なし」では、調達リードタイムに応じた情報タイミング設計を行い、内示情報の確度を見極めて生産計画を立案し、長納期・中納期・短納期の部品・材料を製造で使用するタイミングに合わせて精度良く手配することが重要である。

「受注設計生産:受注時に設計から開始。多種多様で繰返し性なし」では、生産計画〜設計〜出図〜調達〜製造の同期化が不可欠である。特に営業と設計間で最も大切なのは「確定仕様情報」を顧客から入手するために営業が顧客に働きかけ(要求し)、各工程で必要な情報を入手しない限り次の工程には進めないという仕組みを作り上げて設計の手戻りを防ぐことが必要である。一気通貫生産方式の完成には、全体最適の活動が重要であり、営業〜設計〜生産管理〜調達〜製造が連携しなければならないこの例が端的な事例である。

3. 一律な仕組みの運用から混在した仕組みの並存へ

以上述べたように、リードタイム短縮を主眼とした一気通貫生産方式の導入に当たっても、すべての企業が同じ仕組みを構築すれば出来上がるというものではない。顧客の特性、作る製品、増産局面か減産局面か、使う部品・材料の調達リードタイムなどが違えば作り上げるべき仕組みにはバリエーションが加わる。ビジネスモデルの違いによって必要な仕組みが変わるため、その工場のプロダクトミックスの状況によっては過去の一律な仕組みでの生産活動から脱却し、混在した仕組みをいかに効率良く運用するかが他社差別化のポイントになる。一気通貫生産方式の導入により、リードタイムは極めて短くなると同時に在庫量(仕掛り)は極小化し、生産計画変更を防止し、安定的な生産が行えるためムダなロスコストを発生させない作り方を実現できるが、それを支える管理レベルの改善すなわち仕組みを変える改善が必要とされる由縁と言える。

 日刊工業新聞社刊「工場管理」2016 VOL.62 No.3 掲載記事に加筆訂正
株式会社アステックコンサルティング
チーフコンサルタント 太田 一成
生産革新講座 連載
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)NEW!
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(3/3)(2013.8.12)
第16回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2/3)(2013.7.5)
第15回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(1/3)(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)