第49回 「設計開発部門改革の第一歩」

さて今回は、あらゆる製造業において設計ツールの活用と外注設計活用のポイントにつきまして説明させていただきます。

1.ツールの活用

  1. ① 図面作成ツール、試作について

数年前は2次元CADがメインで、試作についてもお金と時間をかけて行ってまいりました。しかしここ数年3次元CADが進歩してきて、作図時間の短縮はもとより試作する前にシミュレーションを行う事により事前に問題点を把握したり、工場も図面で製作準備を行うことが出来るようになってまいりました。しかし3次元CADの最も大きな効果は標準化が進めやすいことにあります。一旦部品を登録しておけばその部品を使って標準化がすすめられます。他の設計者が作図した図面を容易に流用でき、流用化についても大きく進歩することが出来ます。

或る企業での、3次元CADを活用した標準化推進についての事例を説明させていただきます。

2次元CADをツールとして使用していたときは、新製品モデルでは2次元比較で約60%の工数削減が出来ました。また従来は展開モデルであっても1から作図していましたが、3次元CADを使用すると1から作図する必要は無く初期の部品登録は別作業と見て約90%の工数削減が出来ました。その理由は1度作成した3次元モデルは他の部品の流用が可能ですし、1つの部品を修正するだけで全てに反映させることが出来るからです。部品の流用につきましてもファイル名以外にプロパティーを利用した高度な検索も可能ですので欲しい部品を簡単に見つけることが出来ます。部品の置換につきましても構造が同じであれば、部品を置換しても拘束条件は維持されますのでかかる工数は非常に少なくてすみます。流用設計につきましては構造が同じであればパラメータを編集するだけで設計が出来ますし、エクセルの寸法表からVBAマクロで自動生成することも可能になってまいります。設計業務の付帯作業につきましても工数削減が図れます。使用されている部品の自動集計や従来では難しかった素材の正確な使用量や塗装等の表面面積も把握できます。

品質については、部品の干渉や足りない部品が直感的にわかるので早期の段階で不具合を発見し後戻り作業を無くすことができます。

  1. ② RPAの活用

設計業務を大きく分類いたしますと、作図・計算・構想設計といった「付加価値業務」と、会議・打合せ・資料探し・メール・電話といった「付随業務」と手待ち・休憩といった「ムダ業務」に分類されます。業務効率改善する着眼点はこの中で付随業務です。更に付随業務の中でもルーチンワークと非ルーチンワークにわけることが出来ます。ルーチンワークで設計者でなくても出来る業務(出図作業、パラメータ入力方式のルーチン的な計算、etc)をかつてはパートさんで対応しておりました。

現在はこのようなデスクワークを「RPA(ロボティク・プロセス・オートメーション)」で対応する動きが出てまいりました。社内のシステムとエクセルシートを行ったりきたりしながらデータのコピー&ペーストを繰り返したり、検索し定型様式に吐き出したりすることは、大規模なシステム導入をしなくても出来るようになってきております。このような時代の潮流に遅れをとらないようにすることも重要です。

2.外注設計活用のポイント

設計業務の増大に伴って、仕事量が内部の人員だけでは廻らなくなってまいります。その際に外注設計を開拓し活用していくケースが出てきますが重要なポイントがいくつかあります。

  1. ① 仕事量の負荷予測と外注施策

よくあるケースとして、目先の仕事量に応じて外注に対して行き当たりばったりの仕事の出し方をされてる会社があります。設計外注の場合はなかなか同レベルの設計技術を有した外注先は簡単に見つけることが出来ないので、予め長期的な外注施策をもって対応する必要があります。
例えば外注先にとっては発注先の仕事を1社でほとんど全量の仕事を請けているようにもって行きます。その外注先は内部のメンバーがある程度パワーをかけて外注先の育成を行いますし、仕事量も確保してあげることが重要です。そしてその外注先に出す仕事は発注側からみてコアな設計業務を依頼すべきです。

また何処でも設計業務対応可能なライトな設計に関しては、コスト・納期・品質を加味して都度発注するべきです。

  1. ② 外注設計品質向上

外注の設計品質はトータルの設計コストに跳ね返ってきますし、内部のメンバーの手戻り作業になってきますので要注意です。それを防ぐ為には先ずは発注側の問題として外注設計に対してしっかりと設計仕様を伝えているかと言う問題があります。えてしていい加減な仕様で外注設計側が勝手に判断して2ドデマになっているケースが多々見られます。或る会社の事例では検図を担当者、係長、課長に3回チェックしていました。確かに検図は重要ですがそれにかけるコストは下げる必要があります。

先ずは外注設計内部でしっかりと検図してもらうこととCAD等ツールをあわせることや一連の設計作業が終了したら必ず反省会を実施してお互いのコミュニケーションの向上を図ることが大切です。
一時的なエネルギーはかかりますが外注が育成できた暁には内部人材と同等の資産を得ることが出来ます。

生産革新第20-5


以上で、5回シリーズで行ってまいりましたあらゆる製造業で最も重要な「設計開発部門改革の第一歩」の講座を終了いたします。第1回では設計開発部門に対する改善の難しさ、第2回では設計改善のための5つの切り口と設計思想の説明、第3回は設計思想に準じた標準化と標準化に対応した、設計方式について、第4回は設計の見える化と業務フロー改善の説明、第5回は設計ツールの活用と外注設計活用ポイントにつきまして説明いたしました。皆さん少しはお役に立てましたでしょうか?

最後に私が最近痛感することをお話して締めとさせていただきます。多くの企業で設計部門内に問題があるのは認識されているが、日常業務に追われて本質的・本格的な改善活動が行われてないですし、設計者は忙しいので設計改善スタートになかなか踏み切れない場合が多いです。そのなかでコンサルティングを通じて設計改善を腰すえてやれば必ず成果に結びつけることは出来ますし、設計改善が出来た暁には他部門への波及効果は非常に大きいので企業の重要な課題であることは間違いありません。

以上で「設計開発部門改革の第一歩」は終わりとなります。より詳しい内容を知りたい方やより早く成果へたどり着きたい方は弊社までご連絡ください。

 

株式会社アステックコンサルティング
生産革新講座 連載
第104回  新製品の企画開発の進め方(3/3)(2023.3.13)
第103回  新製品の企画開発の進め方(2/3)(2023.2.20)
第102回  新製品の企画開発の進め方(1/3)(2023.1.30)
第101回  原価設計と運用(3/3)(2023.1.12)
第100回  原価設計と運用(2/3)(2022.12.19)
第99回  原価設計と運用(1/3)(2022.11.28)
第98回  経営成果につながる小集団活動(3/3)(2022.11.16)
第97回  経営成果につながる小集団活動(2/3)(2022.10.18)
第96回  経営成果につながる小集団活動(1/3)(2022.9.26)
第95回  調達を機軸とした企業変革力の強化(3/3)(2022.9.5)
第94回  調達を機軸とした企業変革力の強化(2/3)(2022.8.23)
第93回  調達を機軸とした企業変革力の強化(1/3)(2022.7.25)
第92回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(3/3)(2022.7.4)
第91回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(2/3)(2022.6.13)
第90回  新商品開発の進め方~開発と量産導入(1/3)(2022.5.30)
第89回  間接部門の働き方改革(3/3)(2022.5.18)
第88回  間接部門の働き方改革(2/3)(2022.4.14)
第87回  間接部門の働き方改革(1/3)(2022.3.25)
第86回  生産性指標の設定と活用方法(3/3)(2022.2.28)
第85回  生産性指標の設定と活用方法(2/3)(2022.2.7)
第84回  生産性指標の設定と活用方法(1/3)(2022.1.19)
第83回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(3/3)(2021.2.22)
第82回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(2/3)(2021.2.8)
第81回  コスト・在庫の適正化につながる現場改善(1/3)(2021.1.25)
第80回  生産設計によるコストダウン(3/3)(2021.1.12)
第79回  生産設計によるコストダウン(2/3)(2020.12.21)
第78回  生産設計によるコストダウン(1/3)(2020.12.7)
第77回  生産管理システムを活かした改善(3/3)(2020.11.24)
第76回  生産管理システムを活かした改善(2/3)(2020.11.9)
第75回  生産管理システムを活かした改善(1/3)(2020.10.27)
第74回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(4/4)(2020.10.12)
第73回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(3/4)(2020.9.29)
第72回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(2/4)(2020.9.14)
第71回  品質で顧客満足を獲得し企業の体質強化を図る(1/4)(2020.8.24)
第70回  指標管理による業務革新の「見える化」(3/3)(2020.8.3)
第69回  指標管理による業務革新の「見える化」(2/3)(2020.7.20)
第68回  指標管理による業務革新の「見える化」(1/3)(2020.7.6)
第67回  部門・組織を越えた改善の進め方(3/3)(2020.6.22)
第66回  部門・組織を越えた改善の進め方(2/3)(2020.6.8)
第65回  部門・組織を越えた改善の進め方(1/3)(2020.5.26)
第64回  全体最適型改善のススメ(3/3)(2020.5.15)
第63回  全体最適型改善のススメ(2/3)(2020.4.27)
第62回  全体最適型改善のススメ(1/3)(2020.4.6)
第61回  攻めの設備保全(3/3)(2019.8.5)
第60回  攻めの設備保全(2/3)(2019.7.22)
第59回  攻めの設備保全(1/3)(2019.7.1)
第58回  食品メーカーの生産性革命!(3/3)(2019.6.17)
第57回  食品メーカーの生産性革命!(2/3)(2019.6.3)
第56回  食品メーカーの生産性革命!(1/3)(2019.5.20)
第55回  コストの見える化(3/3)(2019.5.8)
第54回  コストの見える化(2/3)(2019.4.15)
第53回  コストの見える化(1/3)(2019.4.1)
第52回  強い管理職をつくる!(3/3)(2019.3.18)
第51回  強い管理職をつくる!(2/3)(2019.3.4)
第50回  強い管理職をつくる!(1/3)(2019.2.18)
第49回  設計開発部門改革の第一歩(5/5)(2019.2.4)
第48回  設計開発部門改革の第一歩(4/5)(2019.1.21)
第47回  設計開発部門改革の第一歩(3/5)(2019.1.7)
第46回  設計開発部門改革の第一歩(2/5)(2018.12.17)
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(3/3)(2013.8.12)
第16回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2/3)(2013.7.5)
第15回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(1/3)(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)

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