活動報告

生産革新講座

第48回 「設計開発部門改革の第一歩」

さて今回は、設計の見える化と業務フロー改善につきまして説明させていただきます。

1.設計の見える化

設計改善の最初に取り組む内容は、第1回目に申し上げました「モチベーション」の醸成ですが、ここではそれが出来たという前提で、次の「見える化」について説明します。

  1. @ 設計付加価値業務比率を上げる

設計者個人もしくは設計チームとしての業務を見直し、業務を「付加価値業務」「付随業務」「ムダ業務」に分類し、改善の効果が出やすい「付随業務」と「ムダ業務」の改善に取り組みます。ここで設計の「付加価値業務」、「付随業務」とは何でしょうか?「ムダ業務」は簡単ですよね。トラブルシュート対応、手待ちや休憩、雑談がムダに該当いたします。「付加価値業務」と「付随業務」の区分は少し複雑で、会社によっては求められる要件で変わってまいります。ここでは一般的な考え方を説明いたしますと「付加価値業務」は作図、構想設計、計算、設計検討業務になります。「付随業務」は付加価値業務を行う為に必要な業務ですが、出来るだけ短時間で済ませたい業務です。会議、電話、メール、打合せ、検図、調査、資料作成、資料図面検索等が該当いたします。なぜ「付随業務」に着眼するかと言いますと、「付加価値業務」を改善しようとすると作図ツールを替えるとか設計能力向上といった結構時間がかかる活動になります。一方で「付随業務」は資料作成フォーマットを作成し効率化するとか、会議やメールのルールを見直して改善を図ることはそんなに時間がかかりません。ですから「付随業務」と「ムダ業務」に着眼いたします。

では実際にこれを実施する為の手法の説明をいたします。

  1. A 自己時間分析(SELF・TIME・STUDY)

そのための見える化・分析手法として「自己時間分析(STS分析)」があります。先ずは設計者個人別の業務の棚卸しを行い「業務体系表(個人別)」を作成します。個人の体系表を取りまとめるとチームとしての「業務体系表(チーム)」ができます。それを基準にして15分単位くらいで、その瞬間何をしていたかをデータとして記録していきます。例えば15分単位で8時間データを取ると、32個データをとれます。20日分で640個データが取れます。1ヶ月自己時間分析をいたしますと640個のデータが取得でき、それぞれの作業が業務体系表のどの業務かが出てきます。

それを「付加価値業務」「付随業務」「ムダ業務」に分類して改善テーマを決めていくことになります。(図1)

生産革新第20-5

以上の手法でムダ取りを行う事によって仕事の総量を減らしていきます。そのあとで重要な改善取り組みは「業務フロー改善」です。

2.業務フロー改善

業務フローとは正に仕事の進め方でございますが、多くの企業で仕事の流れ(本流)に余分な流れが加わり(傍流)全体としての流れが悪くなっています。その結果、余分な作業工数が加わり業務として、会社としての生産性が低下している場合が多くあります。一方で業務の標準化は、業務の進め方や手順を明確にすることにより個人差を防止して適切な進捗管理が出来ることが目的です。その手段として業務フローの見直しによる業務改善を進めることが出来ます。

  1. @ 第1ステップ

開始から終了までの情報の流れ(帳票の種類と動き)を細かく分析し、現状の仕事の流れの問題点、部門間(個人間)の情報伝達の問題点を抽出し、改善を進めて行きます。同時にリードタイム短縮視点で業務を見直し、業務遂行上の「待ち」の削減なども実施して行きます。先ずは現状の業務フローを書き出し全員で論議し見直しを行います。


業務フローの中で例えば
 ●実コストを無視した受注金額の設定
 ●設計者の思い込み、情報の確認不足
 ●構想者と図面作成者の打合せ不足による時間ロス、目的外設計、やり直し
 ●設計者のスキルの差による構造差異
 ●顧客との打合せ不足による追加工事、追加設計、やり直し発生
 ●設計者が製造設備を知らないために不必要な加工、難易度の高い加工、
  高コスト加工、社内設備を利用できない加工が発生
 ●営業のスキル差異による後戻り

等が見直しのポイントになってまいります。 設計開発は複数の組織や人を通じて完成させるものであり、情報分断による停滞が発生するのでそこに注目し、部門間のコミュニケーションとボトルネック工程の改善を進めていきます。

  1. A 第2ステップ
業務フローの作業単位別に標準時間の設定を行います。標準時間の設定は、各作業(図面作成、検図等)時間を過去の日報から集計して平均値で設定する場合が多いです。但し設定時間の適宜見直しは必要です。決め細かく工程の時間設定を行い、この標準時間を使って中日程計画作成及びそれにもとづく週間ベースでの予実管理やスケジュール管理へも展開できます。設計部門であろうと業務推進の基準が必要ですし、その基準(標準時間)どおりできなかったのであれば、その原因を見つけてつぶしていけば、計画的な業務推進を行うことが出来るはずです。結果として出図遵守率の向上や設計リードタイムの短縮が図れます。

  1. B 第3ステップ

仕事の流れは確認やチェックなど余分な作業が増えることにより複雑化し、作業時間が必要以上に増加する傾向が出てきますので定期的に簡素化の取り組みが必要になってまいります。見直すときのポイントは一旦業務スタートしたら直行させることであり、直行しない業務分担・フローは至急改善することが重要です。下記の内容がポイントになってきます。

 ● 各業務の処理方法、効率的な流れの追求
 ● 発信者から最終確認者までの流れを明確化
 ● 不要な経由ルートの排除
 ● 責任分散システムの切りくずし
 ● 重複した業務の排除
 ● リードタイムの短縮化

乱流、輻輳化、断絶等フロー情報の収集を行い業務フローの一本化や単純化を実施していきます。
業務フローを見直して乱流、輻輳化、断絶を改善しボトルネック工程改善を行った後は、標準時間の設定を行い、設計基準日程を作成します。そしてその基準日程どおり業務推進が出来たかを週間単位で設計管理していきます。以上は業務推進手順の標準化であり、工程管理のマネージメントの仕組みの確立が重要になってまいります。 (図2)

生産革新第20-5


業務フロー改善の際に、避けてはならないテーマとしてツールの活用があります。

次回はその重要性を説明いたします。

株式会社アステックコンサルティング
シニアコンサルタント 荻原 豪
生産革新講座 連載
第58回  食品メーカーの生産性革命!(3/3)(2019.6.17)NEW!
第57回  食品メーカーの生産性革命!(2/3)(2019.6.3)
第56回  食品メーカーの生産性革命!(1/3)(2019.5.20)
第55回  コストの見える化(3/3)(2019.5.8)
第54回  コストの見える化(2/3)(2019.4.15)
第53回  コストの見える化(1/3)(2019.4.1)
第52回  強い管理職をつくる!(3/3)(2019.3.18)
第51回  強い管理職をつくる!(2/3)(2019.3.4)
第50回  強い管理職をつくる!(1/3)(2019.2.18)
第49回  設計開発部門改革の第一歩(5/5)(2019.2.4)
第48回  設計開発部門改革の第一歩(4/5)(2019.1.21)
第47回  設計開発部門改革の第一歩(3/5)(2019.1.7)
第46回  設計開発部門改革の第一歩(2/5)(2018.12.17)
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(3/3)(2013.8.12)
第16回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2/3)(2013.7.5)
第15回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(1/3)(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)