活動報告

生産革新講座

第38回 「一品受注型企業のリードタイム短縮」

計画立案から出荷までのリードタイム短縮の着目ポイント



1.生産計画の立て方

前回のコラムでは引き合いから設計図面作成までを述べましたが、最後にB計画立案から製品出荷のステージでのリードタイム短縮の方法を説明します。

このステージは製造現場での混乱をいかに無くすか、そのために関係部署がどのように連携するかがポイントとなります。
このステージでは守れる「生産計画」をしっかり決めて、欠品のない「モノ揃え」を行い、「計画どおりに生産が行える現場体質」を作ることを目指しますので、押さえどころは、「生産計画の立て方」、「調達改善を進める」、「製造リードタイムの短縮」の3点となります。

一品受注型生産の計画策定にあたっては、生産計画体系と基準日程系の2本柱で考えます。

生産計画体系とは多段階に作成する生産計画の関連性と各々の計画からの行動を決める仕組みをいいます。(第1図)

まず受注を受けた段階で大日程計画を作成し、全体のアウトラインを決めます。その後、中日程計画、小日程計画へと展開していきますが、大切なのはこれらの計画の連携性で、日程計画の結果を確実にフィードバックする仕組みの構築が重要です。


生産革新第20-5

大日程計画とは案件別のトータル計画(受注から検収まで)のことで、長納期部品の納期管理や大きな負荷調整(設計、製造)を考慮するためのものです。

大日程計画は後述の基準日程をベースに作っていきます。案件によっては正確な日程を確定できない場合もありますが、その場合は過去の類似品の日程を参考に計画を立案します。全ての計画の根幹になりますので、非常に重要な計画です。余裕を持ちすぎた計画を立てないように注意します。
中日程計画は一番力を入れて作るべき計画で、3ヶ月〜半年後を視野に入れた計画で、設計部門の出図に基づいて部品別・工程別の計画を策定します。製造だけでなく調達や生産技術の中日程計画も大事で、負荷調整を行い平準化を考えていきます。

大切なことは情報の受け渡しポイント設定とタイミングであり、上流工程から正しいタイミングで情報(仕様情報、設計情報、図面、部品情報等)が来なければ後工程の計画は作り直しになります。中日程計画のキーワードは連携性(連動性)で、実際には必ず日程のズレが発生するためズレを吸収/調整する仕組みの構築が不可欠であり、遅れを是正する仕組みが必要となります。
小日程計画では、週単位の生産計画を作成します。当然変更・修正などの情報を反映させた計画にします。小日程計画で必要なことは、計画通りの生産を行えるような生産計画を作成することに尽きます。そのためには物の流れに沿った生産計画をベースに、工程ごとの生産計画(作業指示)の両面で管理することが求められます。
基準日程とは各工程の所要時間を明確にし、各工程間で停滞が発生しないように立てた詳細な基本工程計画のことです。基準日程については、生産革新講座 第8回 「一気通貫生産方式の基本的な考え方」に詳しく記載されていますので、このコラムでは説明は割愛させて頂きます。

さて生産計画は作って終わるものではなく、どんなに良い計画を作っても、それが守られなければ意味がありません。そのためには生産管理部門が各工程が同期化するように計画を立てて、コントロールタワーとなって進捗管理を行う必要があります。現場任せにせず、一元管理することがポイントです。進捗管理で大切なのは予実の遅れを叱ることではなく、遅れや進みの原因をはっきりとさせ、明確な是正処置を取れるようにすることです。また月単位、週単位、日単位の管理では各計画の目的をしっかりと把握した上で管理を行ないます。まさにその業務こそが生産管理部門の本来のミッションなのです。


2.調達改善を進める

一品受注型生産では「物揃え」が決め手になります。生産計画の当日変更なども材料の納期遅れに起因する場合が多いので、定日納入率(納期遵守率)向上に向けた取組は必須です。その場合「購買品」「外注加工品」「顧客支給品(交付材、顧客引き取り品)」それぞれでの対応が重要です。一般的な調達改善については、生産革新講座 第33回〜35回の 「モノを揃えてなんぼの調達・外注管理」に詳しく記載されていますので、このコラムでは一品受注型生産特有の課題について説明します。
一品受注型生産では「出図〜材料入手〜製造のマッチング」が最も重要です。そのため、調達改善で注目すべきポイントは、調達リードタイムの実力値を明確化し、まずその通りに設計・調達することを基本とすることで守れる生産計画を策定できるようにすることにあります。BOMに作業日の情報を紐付けし、入荷日を設定することで発注管理を行い、出図期限との連動を進めることが重要となります。第2図に「BOMで管理すべき項目の例」を示します。

この管理により期待される効果としては
@素材、外注品、購買品等の調達において ”取引先や資材部門が必要とする適切なリードタイム“と

 設計活動の着手・完了が一致することにより、無理なく納期を 守れる状態になる。
A出図期限の明確化によるフォローアップが容易になる。
B作業日と納入期日の連動により工程前滞留期間が短縮される(管理工数削減)。

などが上げられます。


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一品受注型生産では顧客から支給される部品/機器/半完成品/サブシステムなどを組込むことが往々にして発生します。その場合は自社の生産タイミングと支給タイミングの同期化が極めて大事になります。しかし、仕様決定から実際に支給されるまで顧客側も自社側も極めて多くの部署が介在するため、物と情報のルートや納期管理が曖昧な場合が多いことが課題となります。特に、資材調達部門は顧客支給品についても職務分掌上では責任はありますが実質ノータッチの会社が多いようです。顧客支給品の管理を確実に行うためには、担当の明確化が不可欠なのです。仕様管理/スケジュール管理/現品受入れ管理それぞれで責任部署と担当部署を決め、無管理状態にならないようなルール決めが重要です。第3図に責任部署/担当部署の例を示します。


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3.製造リードタイム短縮

最後の製造リードタイムの短縮には、「守れる計画作り=生産管理改善」と「計画を守る=現場改善」の両面のアプローチが不可欠です。「守れる計画作り」は本コラムの1で述べた計画策定において、各工程での滞留時間が最小になるように基準日程計画を設定し、工程間仕掛りの削減(同期化の推進)および工程数の削減(工程連結の実施)をはかります。また、各工程の通過時間を時間レベルで規定し、移動票による生産指示と進捗管理の実施により遅れ原因の把握と対策を進めていきます。

「計画を守る」ためには@守れる計画を実現する仕組みの構築とA製造現場の改善(計画を守る)がポイントとなります。すなわち、計画どおりにモノを作れる現場の構築に向けて「生産安定性」の実現を目指します。生産安定性とは「計画安定性」、「設備安定性」、「品質安定性」、「労働安定性」、「調達安定性」の5つのファクターから成り立っており、これら5つのファクターはそれぞれ独立しているのではなく相互にからみあっているため、連携した安定性確保も重要となります。(第4図)


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4.まとめ

以上述べたように、一品受注型企業のリードタイム短縮は営業/設計/生産管理/調達/生産技術/製造/物流など複数の部門が全体最適思想の下でしっかりと協力しないと解決できない問題であることがお分かりいただけたことと思います。また、すべての企業が同じ仕組みを構築すれば出来上がるというものではなく、顧客の特性、作る製品、増産局面か減産局面か、使う部品・材料の調達リードタイムなどに合わせて必要な仕組みが変わります。

それらすべてを含めた管理技術の集大成がリードタイム短縮につながるわけです。


株式会社アステックコンサルティング
チーフコンサルタント 太田 一成
生産革新講座 連載
第45回  設計開発部門改革の第一歩(1/5)(2018.12.3)NEW!
第44回  鋳物工場の生産性向上(3/3)(2018.11.19)
第43回  鋳物工場の生産性向上(2/3)(2018.11.5)
第42回  鋳物工場の生産性向上(1/3)(2018.10.22)
第41回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(3/3)(2018.10.1)
第40回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(2/3)(2018.9.18)
第39回  食品工場の生産性向上のための人員管理術(1/3)(2018.9.5)
第38回  一品受注型企業のリードタイム短縮(3/3)(2018.8.20)
第37回  一品受注型企業のリードタイム短縮(2/3)(2018.8.2)
第36回  一品受注型企業のリードタイム短縮(1/3)(2018.7.17)
第35回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(3/3)(2018.7.4)
第34回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(2/3)(2018.6.5)
第33回  モノを揃えてなんぼの調達・外注管理(1/3)(2018.5.23)
第32回  機械加工職場の生産性向上(3/3)(2018.6.27)
第31回  機械加工職場の生産性向上(2/3)(2018.6.11)
第30回  機械加工職場の生産性向上(1/3)(2018.4.24)
第29回  一気通貫生産のバリエーション化(3/3)(2017.6.19)
第28回  一気通貫生産のバリエーション化(2/3)(2017.5.19)
第27回  一気通貫生産のバリエーション化(1/3)(2017.4.18)
第26回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(3/3)(2017.3.22)
第25回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(2/3)(2017.2.21)
第24回  「仕組みを変える」とは何を変えるのか(1/3)(2017.1.24)
第23回  時代環境と変えるべきもの(3/3)(2016.12.13)
第22回  時代環境と変えるべきもの(2/3)(2016.11.15)
第21回  時代環境と変えるべきもの(1/3)(2016.10.18)
第20回  改革の成否を決める教育の重要性(2015.2.17)
第19回  生産革新の方向性(2014.6.20)
第18回  改善戦略が必要な時代!(2014.5.8)
第17回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(3/3)(2013.8.12)
第16回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(2/3)(2013.7.5)
第15回  「脱カンバンの生産革新」 一気通貫方式のすすめ(1/3)(2013.5.28)
第14回  時代は経営視点からの改善を必要としている(2/2)(2013.3.21)
第13回  時代は経営視点からの改善を必要としている(1/2)(2013.2.13)
第12回  現場改善だけでは成果につながらない(3/3)(2013.1.16)
第11回  現場改善だけでは成果につながらない(2/3)(2012.12.11)
第10回  現場改善だけでは成果につながらない(1/3)(2012.11.12)
第9回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(3/3)(2012.10.12)
第8回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(2/3)(2012.09.26)
第7回  一気通貫生産方式の基本的な考え方(1/3)(2012.08.20)
第6回  仕組みを変えればコストは下がる(6/6)「生産設計によるコストダウン」(2012.02.27)
第5回  仕組みを変えればコストは下がる(5/6)「設計によるコストダウン」(2012.02.03)
第4回  仕組みを変えればコストは下がる(4/6)「生産の流れをコントロールする」(2011.12.28)
第3回  仕組みを変えればコストは下がる(3/6)「生産の仕組み自体を変えていく」(2011.09.26)
第2回  仕組みを変えればコストは下がる(2/6)「生産管理の仕組みを変える」(2011.08.29)
第1回  仕組みを変えればコストは下がる(1/6)「コストは狙って下げるもの!」(2011.08.08)